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□ヤブ医者のぼやき
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ガラッと勢いよく
スライド式の扉が開く
もんだから俺のうとうとしていた
頭がびくっとした
半目で医務室に入ってきた
野郎を確認しようと、めいいっぱい
しばたく。ボロボロの
名無しさんちゃんが横を通りぬけて
ベッドにダイブした
ああ血が染みになる






俺はいつものことって
解ってるから
何も見ざる聞かざる
野獣みたいに鳴き叫んでも
俺はコーヒーをすする
この前ここにきた野郎を
追い出そうとしていたときに
奴が真顔で言うんだぜ
まるで痛みなんてはい、さよなら
みたいな顔で
馬鹿面
妊婦でもいんのかよ






しばらく、一時間くらいしたら
地から這い上がる唸り声も
蒼白な名無しさんちゃんが水を飲みに
待合室へやってくる
俺はその一挙一動を
目に焼きつける
蛇口をひねり
そこらへんで引っつかんだ
グラスが水で満タンになるのを
待って、飲む
流し台に三分の一減ったグラスを置く
しばらく排水に吸い込まれていく
血の混じった水を見て
それから細かな傷
一言
何で、血だらけなんだ






こんなやけっぱち女、いるか?
薬、ノー
トライデント、ノー
何も処置しないくせに
ここに来る






ドクター
名無しさんは俺をドクターと呼ぶ
頭が痛い
薬やる
いらない。みっつもいらない
なんだそれって呟いたら
金、薬、死と言った
頭を抱えて、俺の手元を見てるから
うつむき加減に
ぼそ、ぼそ、
今日生きていることに驚いた
ピンピンしてる
だってさ












ヤブ医者のぼやき
20100610


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