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□予感
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眠れなかった。
鈍い疲れきったからだをソファから起こし
半分開けっぱなしの窓に向かう。
煙草を携えながら。



火をつけ、めいいっぱい煙を吸い込むと
少しは落ち着いた。
目の前には力を失ったいくつもの街灯。
その中に、ぽつんと明りを灯すひとつの街灯が飛び込んできた。




彼女を思い出す。
死んだ相棒の名前をクレタ丘の上からいつも
力のかぎりに叫んでいた名無しさんを。
彼女は相棒が亡くなってずいぶん
たってからも、
その簡素な食卓に相棒のぶんの
食器を並べていた。
そして窓を開けた。相棒が新鮮な空気を
吸えるように。
そういうのってちょっと
やり過ぎだと俺は思っていた。
ほかの奴らだってそう
思っていた。
十代目は、どうだろうか。




俺にはわからなかったんだ。
今晩がやってくるまで。









予感
20100610


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