二章
□鏡面世界
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「綺麗でしょう?」
真っ白な花だった。
二人でよく城を抜け出して秘密の花園に向かった。彼はとても手先が器用で花で作った冠を私の頭の上に乗せて、いつか本物をあげるからと言って微笑む。
無理だとわかっていたのに彼の嬉しそうな顔に頷くことしか出来なかった。
彼が微笑めば私も微笑む
二人でずっと一緒にいるのだと信じていた。信じて疑わなかった。
晴れた空に暖かな日差しの中、花弁が風に舞って踊っているようで。
繋いでいた手の暖かさが今でも私の命を繋ぐ
暖炉で燃えていた薪がパチっと音を立てる。
その音でゆっくりと意識を覚醒させる。
薄暗い室内は炎で照らされ、窓からは月明かりが差し込んでいる。
――ここはあの場所じゃない…
いつの間に眠ってしまったのか、突っ伏していた机から体を起こし先ほどまで繋いでいた手を擦る。
手の甲にはヴァンパイアハンターの印である刺青がある。それは束縛であり、約束。
私が貴方を助けますからね
もう一度瞳を閉じようとすると同時に部屋の扉が開かれ、シリュウが現れた。
「風邪をひくぞ?」
「ベットで寝るのでご心配なく〜」
「ならば早くベットに行った方が良い。」
「貴方は私の保護者ですか。」
「一応な。」
シリュウの言葉にクスクス笑いながらベットに入り、目を閉じる。「おやすみ」と言って出て行った彼の気配が遠くに行ったのを確認すると、涙が零れた。
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