二章

□鏡面世界
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次の街に行こうと決めた矢先のこと、大雪の影響で道が封鎖されてしまった。現在泊まっている宿は老夫婦が経営している小さな宿。道が塞がれていることを話すと宿の手伝いをすることで春まで置いてもらえることになった。
毎日積もる雪は日に日に量を増し、遂には宿の二階の窓から外に出られる程になってしまった。
毎年そういうことになるのだと言う。秋に蓄えた食糧や薪は地下に大量に貯蔵され、外に出ることなく生活できる。

「凄いですね…」
「そうだな」

特にやることも無くなってしまい、最近では二人で色々なことを話して一日が過ぎて行く。とても幸せな時間。
春の雪解けを待ってこの街を出ると決めてから毎日地図と睨めっこをしている。いかに安全に次の街まで行けるか。基本的に野営は危険が伴うから避けたい。
ルビーはヴァンパイアだから夜は助かるが、逆を言えば昼間動けない為夜間の行動になってしまう。夜は視界も悪く方向を見失いやすいから出来ればあまり行動したくない。一番良いのは馬車に乗ること。敵が出ればなぎ倒せば良いし、運がよければ報奨金がもらえる。
今回も既に馬車を探している。そしてその馬車がどんなルートを通っていくのか一通り頭に叩き込んでおく。

市場で買った地図の上を指で辿り地形を頭に叩き込んで行く。注意しなければいけない場所、雪解けは川の水量を増やす。それも考慮して橋の場所すら叩き込む。

「ハクゲンは相変わらずだな。」

次第に声すら届かなく成程夢中になってしまった恋人の姿にシリュウは苦笑すると、帰ってこないもう一人の仲間の姿を探す為部屋を出た。






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