二章

□『…Secret…』
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「はいるに入れないな〜もう〜」
そんな光景を扉の影からそっと覗き見ていた影は、はあっと溜息を吐くと階下の食堂へと降りた。
「ラブラブはいいですけどぉ」
やれやれと首を振りながらもその表情は穏やかで。時間が早いせいかガランとしている食堂の端の方に席をとる。
見れば、いつもは席に着けば直ぐにやってくるウェイトレス達の姿もない。
疑問に思っていると目の前を見慣れたウェイトレスが通り過ぎる。彼は注文をしようとウェイトレスを呼んだ。
「すみませ〜ん!」

頭の中で何を頼むかは一通り決めていたのに、呼んだウェイトレスから聞かされたのは準備にもう少し仕度がかかると言う返事だった。
「だから誰もいなかったのか‥」
がっくりと肩を落とした彼を見て、ウェイトレスはあることを思ついた。
「そうだお客様、良かったら先にお風呂なんていかがです?今はまだ誰もいないから貸切りですよ〜」
正直風呂に興味はなかったが、『貸切り』の文字にひかれそのまま風呂場に向かうことにした。空腹を少しでも紛らわせないと大変だ。


買ってきた荷物を籠に入れ、手早く服も脱いでいく。
先ほどのウェイトレスの計らいで入り口には『準備中』の札がかけられ、ゆっくりとはいることができた。
脱ぎ終わった服を綺麗に畳み、脱衣所から風呂場に行こうとしてふと視界に大きな鏡が映る。

「…あ〜あ‥」

正直鏡に自分の姿が映ることは嫌だった。
それが服をまとっていないのならば尚のこと。






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