二章

□『…Secret…』
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「雪ですシリュウ!!」
「ああ、最近随分と冷えてきていたからな。」

そこは宿の一室。
夜になり起きだしてきた紅宝玉…かつての名は陸遜伯言、現在の愛称はルビー。そして彼には『ハクゲン』と呼ばれるその少年は、宿の窓から舞い落ちる雪を見ながら手渡されカップの中身を口につける。暖かなそれは口に含むと口の中いっぱいに甘さが広がり、甘い物好きな彼は事自然と口が綻ぶ。

「マーベルは買い物に行っているよ。」
「そうなんですか。」

隣に立ち同じように窓の外を見る彼もまた、自分と同じように暖かな湯気のたつカップを手に持っている。しかし中身は絶対に苦くて、自分が飲むとむせてしまうであろう黒い液体…。

「…飲むか?」
「いりません。」

ニッコリ拒否をすると「美味いのに」とブツブツ言いながら窓から離れていく。
そんな行動がちょっとだけ子供みたいで面白い。自分よりも大きな背中…高い背。ずっと長い間『陸遜』が探していたその人。かつて戦いの中で互いに想いを寄せ合うも敵として別れ、失い、長い年月を経て、今再び巡り合うことができた最愛の人『シリュウ』。
持っていたカップを机の上に置き、備え付けられた暖炉に薪をくべようと屈んでいるその背に、ぎゅっと抱きつく。

「どうした?」
「いえ、ちょっとだけ…」

自分は体温が無いから暖かくはないだろう。それでも彼といると失っていた体温が戻ったのではないかと思うほど暖かい。

ずっと続くなんて思ってない
そんなこと自分が望むことは許されない
それでも

「ちょっとだけで、いいんです…」

今日が今日であるうちはどうかこの夢を見させてほしい
夢が覚めるのはいつのことだろうか?
彼を失ったらこの夢は覚めるのだろう
自分はその時この人を離すことができるのだろうか?
捨てなければいけない
自分はもう人ではないのでしょう?
側にいる権利なんてないのに

それでも それでも

「ハクゲン、泣くな。」
「…はい。」

今だけはどうか…



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