二章
□『…Secret…』
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ハラハラと
「…雪だ」
舞い落ちる
見上げた灰色の空。いつか見たような…そんな気がして、しかしそれをハッキリと思い出すことはできない。
雪は全てを奪っていく
家族も、友達も、何より一番大切だった人すらも…
穢れの無い白がいっそ憎らしく
それでも触れれば溶ける儚さに寂しさを感じ
冷えた手はいつになったら暖まるのだろうか
冷えた手を最後に暖めてくれたあの人と別れ、数年。今でもその面影を追っている自分がいる。
あの日から誰にも言えない秘密を、枷を、己に科せ
唯一あの人が「好き」だと言ってくれた髪。結い上げていた髪紐を解くと、冷たい風に遊ばれて髪がサラサラと揺れながら広がる。
この雪のようにこの思いも、溶けて消えてしまえばいいのに…
見上げた空
雪とは違う
暖かな雫がそっと
頬を濡らした
『…Secret…』
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