あの子の魔法使い

□第6話
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「俺はポコ。この山の近くにある満腹山に住む、たぬき科の種族だ」

「ふーん、満腹山ね。聞いた事ないわ」

「ま、まぁ、この山に比べりゃ小さな山だからな」


現在、先程とは場所を変えて、洞窟内のどこか奥まった場所で座って会話中。
ポコと名乗った小豆色のたぬきはまるで芋虫の様に、縄でぐるぐる巻きにされて地面に転がっている。


「それで?なんで、こんな所でドラゴンに化けてるわけ?」

ソテロが冷たい視線を向けてポコに言う。
どうやら、先程自分を攻撃してきた事にご立腹らしい。
ちなみにポコを縛り上げたのもソテロである。


「ち、ちょっとやる事があって……」

「何よ、やる事って」

ソテロの視線にびびったのか、歯切れ悪く喋るポコ。
なんだか不憫でヒナが助け船を出す。

「今までずっと化けて暮らしてたのか?たぬきって変身出来るんだ」

「あ、ああ。俺の種族は他の生き物に変身するのが得意なんだ。もうここに潜り込んで5ヶ月になるな」
 
ヒナの優しい表情に、少し安心した様にポコが答えた。 
「その……ここの宝物庫に用があって……」

「何よ、オマエ。ただの泥棒?」

ソテロの心底呆れた様な視線に、慌ててポコが反論する。

「ち、違うわっ!!誰が泥棒なんかっ!!俺は姫様を助けに来たんだ!!!」

「姫?」

きょとんとする二人にポコはしまった、という顔をすると、慌てて口をつぐむ。 
「な…なんでもない」

「えー、なになに姫様って。おまえの国のお姫様?」 
「アンタらには関係ないっ!!」

語気を強めたポコに一蹴されるが、ヒナは僅かにきょとんとしただけで、全く動じても懲りてもいない様だ。 
ぐるぐる巻きで転がっているポコを拾い上げると、近くにあった小さな岩に座らせて、少し不思議そうな顔をして喋り始める。

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