あの子の魔法使い
□第4話
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現在正午。
溜まった仕事が一段落してからソテロは一旦執務室を出ていった。
すぐに戻る予定なので手には目を通していた書類を持ったままだ。
今朝の会話のせいであの人間を思い出して不機嫌になっていた気分を変えようと、ソテロは全面が庭に面して吹き抜けになっている一階の廊下から庭を眺めていた。
「……ふぅ」
柔らかく吹く風が心地よい。
庭に咲く何種類もの花の香りで、ソテロの気分はすぐに回復した。
よし、今日も張り切って仕事をするか、とソテロが執務室へと向おうとすると、聞きたくもない先程の話題の人物の声が聞こえてきた。
「あー、ツンツンだ」
……………。
声が聞こえた方には振り向かず、ソテロはそのままスタスタと執務室へと歩き出した。
するとその後をヒナがスタスタと付いてくる。
……なんで付いて来るんだコイツ……。
さっさとこの人間から逃げたくて、ソテロはほとんど小走りかという位に早歩きで歩いた。
当の人間は相変わらずの歩幅でスタスタとソテロの後を付いてきているという事にソテロは苛立つ。
自分は年のわりに背が小さいし、この人間は普通にでかいから、元々の歩幅が違う。
それでも自分が早歩きをしているのに、のんびりと後ろからヒナが付いてこれる事がなぜだか無性に腹立たしくて、ソテロは後ろを振り返ると思いっきりヒナを睨みつけた。
「なんで付いてくるのよっ!!!!」
「……いや、俺も方向こっちだから」
なんとも言えない様な呆れた顔で、ヒナが俺は屋敷の出口に行きてーの、と言う。
確かにこの本館の出口はこの廊下の奥の突き当たりで、執務室は廊下の奥にある階段を使わなければならない。
ソテロは勘違いによる恥ずかしさと悔しさで、再びヒナに背を向けて前を向くとつっけんどんに言った。
「あっそ、悪かったわね」
「おっまえ、マジで可愛くねーな。なんでそんなツンケンしてるわけ?」
ヒナの少し怒った様な言葉にソテロが歩き出そうとした足を止めてジロリと睨む。
「はっきり言うわよ。オマエ本当にうっとおしいわ」
ソテロの目は氷り付けにされそうな程冷ややかだったが、ヒナも負けてはいない。
「んなのすっげぇ今更なんだけど。一緒に暮らしてんだからさ、もう少し普通に話してくんない?」
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