あの子の魔法使い

□第3話
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「平気です、お祖母様。いつも申し上げておりますでしょう?私はこの仕事を少しも苦には感じておりません」

ノアの思考を感じとったのかソテロはほんの少し困った様だったが、その顔にはなんの表情も浮かんではいなかった。

ソテロは普段滅多に笑う事がなかった。
昔から大人びていてあまり笑う子ではなかったが、ここ数年、彼女は全く笑顔を見せていない。
 
そしていつもの様に淡々と続ける。


「苦にならないという事は負担ではないという事。『ノエル=コクロワ』を守るのは私の役目であり、義務です。この役目は誰にも替われません」

「……ソテロ…」

「それではお祖母様、私は図書館に行って参りますわ。では」

そう言って豪華な銀の髪を揺らして優雅にお辞儀をすると、ソテロは部屋を出ていった。


「……ノア様」

ジョルジュが遠慮がちにノアに声を掛ける。
もっともソテロ同様、いつもポーカーフェイスな彼の表情は全く変わっていないのだが、なんとなく自分を気遣ってくれているのが分かる。


「まったく……自分が情けないよ、大切な孫なのに……」

ぽつりとため息と共に自嘲気味に呟く。

「ソテロ様は『ノエル=コクロワ』が何よりも大切なのですよ。旦那様が残されたこの国を守ろうと必死になっていらっしゃる」

ジョルジュが穏やかに言う。 
唯一の救いはこの優秀な執事の存在だろうか。

彼はソテロの父親、つまりノアの息子の代からこのヴァチスタ家に仕えてくれている忠実な執事であり、今や家族の一員だ。


ソテロにとって彼は唯一気を許せる存在だった。


「あんたが居てくれてよかったよ」

ノアが穏やかに告げる。
 
彼にはいつも感謝しっぱなしだ。


「それはありがとうございます。それでは私はソテロ様に頼まれた仕事を始めるとしましょう」

「そうだね、頑張っておくれ」

そう言って微笑むと、ノアは執務室のドアを開けて部屋から出ていった。

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