あの子の魔法使い

□第2話
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「違う!!そのスペルは“a”じゃなくて“u”!!何度言ったら分かるんだい!?」 

「あ〜も〜ややこしーなー!!」

 

ここは『ノエル=コクロワ』の王族、ヴァチスタ家の一室。
昨日ノアがジョルジュとやらに言って用意してもらったヒナの部屋だ。

さっそく今日からノアの魔法の修業が始まった。

ノアは予想以上にスパルタで、間違えると容赦なく頭を叩かれる。

ヒナはため息をついた。

魔法の修業っていうから魔法弾の撃ち方とか、空の飛び方を習うのを想像していたが、全く違った。
ノアにそれを言ったら、

「何言ってんだい!!あんたはまず、魔族の文字を読める様になることだよ!!」

と言われてやっぱり頭を叩かれた。

基礎が全くない自分はまず、魔族の文字を知って魔法書を読める様にしなくてはならないらしい。

魔族は皆魔法を使えるので、大抵の魔法書は魔族語で書かれている。

人間は皆魔力が無い。
が、ほんのたまに魔力を持つ者が生まれるらしい。

その人間の事を“ネクロマンサー”という。

ノアは自分がその“ネクロマンサー”であるというのだ。



……ほんとにそうなんだろうか…

すごい力を持ってるかも、と言われたがこれでは確かめ様がない。
なんだか不安になってきた。




「よし!!じゃあ今日はここまで!!」

「へーい」

「返事は“はい”!!教えて貰ったら“ありがとう”!!」

「はい!!ありがとうございました!!」


ノアはこうやって躾けの事までヒナに教えてくれる。
ノアは大雑把な性格だが、やはり王族だけあってこういう事には余念がない。

ずっと旅をしていてあまり物事を知らないヒナは素直にノアにありがたいと思う。


でも、なんでばぁちゃんは俺にこんなによくしてくれるんだろう……?


ソテロが言う様に自分はノアにとって、素性も分からないわけの分からない人間だ。 


考え込むヒナにノアは本を畳みながら言う。

「じゃぁ次は5時からね。それまで遊んでおいで」

「ほんと!!じゃあ行ってきます!!」

ノアの修業は朝9時から12時までと、夕方5時から9時まで。
それ以外の時間は遊びに行っていい様だ。


この街の事は全く知らないし、今日はいろんな所を散策しよう。

ヒナはうきうきとさっそく部屋を飛び出した。


あ!そうだ!!


「ばぁちゃーん!!あのさ……」

―――ドゴッ!!

「い゙っ!!」 

「使った物はちゃんと片付けていきな!!」

部屋の中からノアが投げた本の角が見事にヒナの頭に命中する。

「ってぇ〜も〜分かったよー…。なぁばあちゃん、あいつどこにいるか分かる?」

「あいつって?」

「こないだの女の子。あのつんつんした」

「ソテロのことかい?あの子なら図書室にいるよ。昨日の男について調べるとか言って」

「そっか、ありがと」
 

ノアに言われた通り本を片付けるとヒナは図書館へ向かった。

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