あの子の魔法使い

□第0話
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この世界には人間や魔族、ドラゴン、フェアリー……
とにかくいろんな種族が暮らしていた。  
    
中でも一番に人口が多いのが人間………だったのだが、最近では魔族がじりじりとその数を伸ばしていた。 

人間と魔族は元々仲が悪い。
なぜ、と聞かれても昔っからそうだったからとしか言いようがない。

両種族はいがみ合って、争ってきた。
この世界が出来て、人間と魔族という種族が生まれて以来ずっとだ。



魔族はいろいろな姿をしている。
ガーゴイルと呼ばれる小さな骨と皮の様な者もいるし、翼の生えた大きなケンタウロスの様な者もいる。

しかし、魔族の中で最も力を持つ者は人型をした者達だった。
見かけは人間そっくりで、年のとり方も寿命も全て人間と同じだが、唯一違う点は耳の先が尖っている事だった。

彼らは皆、生まれた時から魔法を使える事が出来た。頭だって他の魔族と違って格段に良かった。

それゆえ最も高貴な種として魔族の間で崇められていた。



反対に人間は魔力を持たなかった。

そのため人間は道具や体術を使い、長年魔族と戦ってきた。

だが、他の魔族ならいざ知らず、相手は魔法を使う人型の魔族が主だった。
人間は負け続ける事が多かった。

そのため、当初最大の人工を誇っていた人間も、さすがにだんだんと数が少なくなっていき、反対に魔族の数が増えていった。






自分の種族が増えていくのは魔族にとってとても喜ばしい事である。
もちろん魔族のどんな姿形をした者も皆、一様にこの事態を喜んでいた。


だが、人型の魔族はこの事態に焦っていた。


増えていく魔族は人型ではなく、それ以外の、言葉も喋れないような魔族達ばかりだったのである。








天は二物を与えず。


不幸な事に人型の魔族は繁殖能力が極めて低かったのである。

人間と比べても非常に子供が出来る確立は低かった。このまま人間と争って勝ち続けていても、他の魔族の連中達が増えていくだけ。  
これ以上他の魔族達が増えれば、自分達の地位が危ない。

今はおとなしく自分達の下に付いているが、いつ反旗をひるがえしてもおかしくない。


それならばいっそ、人間との争いはやめて、人間からも他の魔族達からも一歩進んだ、今の状態を維持するべきだ。
そんな考えが人型の魔族の間で広まるようになった。 








そしてある日、一つの国でそれは実行に移された。

『お互いの平和のため』と称して、その国の国王である人型の魔族が、人間に休戦協定を持ちかけたのだ。 

さんざん魔族によってやられてきた人間側が、これに応じない筈はない。


こうして、出来た国が













《ノエル=コクロワ》






魔族と人間が供に暮らす国。
このお話の舞台である。




 

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