頂き物小説

□〜きっとくる・・・〜
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「…兄様はどれでしょう?」

ドアを壊すと、髪の毛とワカメが出てきたが、それらは無視して刃を探した。だが、どこを見ても黒いので、見つけるのは困難だ。

「ここまでなるとは…予想外でした」
ディレックは、頭を下げた。ギニアは気にするなと手を横に振ると、おもむろに黒い塊へ、手を突っ込んだ。

「…うぅ…気持ち悪いです…」
鳥肌を立たせながら少し手を動かすと、耐えられなかったのかさっさと抜いた。

「ゴム手袋した方が良いですかね〜?」
「その必要はありませんよ」
ディレックはニッコリと笑って言った。長い黒髪は、浴室を埋めている塊の中に入っていた。

彼にとって、髪は手足と同じようなもので、自由自在に動かせる。今も、黒い塊の中を刃を探すために動いていた。

「………あぁ、いました」
そう言って髪を一旦抜くと、塊の一部に近寄り、髪の毛やワカメを絡ませながらも、刃っぽい物体を取り出した。

赤い髪が見えたので、ギニアは絡まってる黒い物体を掻き分けた。

「やっぱり、気絶してますねぇ…」
「この状況だと、しない方が難しいでしょうね」
ディレックは苦笑して答えると「どうします?」と刃を抱え直しながら聞いた。

「このまま寝かせるのは、さすがに可哀想なんで、これを取らないといけませんねぇ…」
二人は顔を見合わせると、溜め息を吐いた。ひとまず、黒い海となっている浴室を出ると、ハサミを片手に"解体作業"に取り掛かった。

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「…と、そんなわけでしばらくお風呂を貸して下さい」
「あぁ」
話を聞いた前は、あきれた顔で頷いた。内心「くだらない事をしたな…」と思っているが、黙って冷めたお茶を飲んだ。

「お風呂、お風呂〜♪」
上機嫌で浴室に向かうギニアを眺めながら、彼女の言葉を思い返す。

「………あー、ギニア」
「?」
不思議そうに振り向くギニアに、前は確かめた。

「俺の聞き間違えじゃなければ、さっき"しばらく"って言ったか?」
「言いましたよ」
「それは…」
「しばらくは、しばらくですよ〜」
「掃除すれば使えるんだろ?」
「"お掃除すれば"使えますよ」
笑顔で強調するとこを見ると、掃除する気はないようだ。

「いつまでもほっとけないだろ…」
「誰かお掃除してくれる人を見つけないといけませんね〜」
そんな状況にした犯人―ディレック―がいるだろう…と思ったが、ギニアにその気がないなら、言うだけ無駄だろう。

「そうだな」
興味をなくしたように言うと、前は残りのお茶を飲み干した。

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「刃は休み〜?」
翌日、仕事に刃は来なかった。同僚達は顔を見合わせて、「サボリ?」と上司に尋ねた。

「ギニアが言うには『心身ともに危険なんでお休みで〜す』」
「何それ」
「ディレック、なんか知ってる?」
あきれた顔をするものあり、興味を示すものありで、ディレックに視線が集まる。

「顔色悪かったですからね…何と言いますか…全体的に黒かったですね」
『へぇ〜』
笑顔で言うディレックに、全員「お前が言うな」と思ったが、そこは黙っていた。
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