頂き物小説

□〜きっとくる・・・〜
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「こんなもんか」
髪を取り終えたところで、鍋本体を出そうと、バスタブを見た。

「…気のせい、だよな…?」
目をこすって、もう一度見る。気のせいではないようだ。

「何、入れたんだ…?」
バスタブから、何か出ている。髪の毛もあれば、髪の毛を押し出すようにして、出てきたものもある。その全てが、黒い。とにかく黒い。

「オイオイオイオイ…」
知らず、扉の方に歩いていた。正体不明の謎の物体によって押し出された髪と、刃が取っていた髪が少しずつ向かってくる。

「…ただの髪だ。こんなんで誰がビビルか…!!」
自分に言い聞かせると、髪の毛に指を走らせる。刃が触れた所から、髪の毛は切れた。しかし、そんな事をしても無駄だった。切れた事で開いたスペースに、また髪と謎の物体が押し寄せてきた。

「…キリがねぇ…」
舌打ちして、何か良い案はないかと、頭を働かせる。しかし、足下までやってきた髪や、謎の物体が気になって、何も思い付かなかった。

「…出るしかないか」
逃げれば、腹黒い二人組がいろいろとうるさいと思ったが、それが一番だった。背後の扉に手を伸ばす。

「んっ…?」
違和感がした。まさか、と振り替える。
「なっ…」
扉は黒くなっていた。ビッシリと髪と謎の物体で埋まっている。
「くそっ」
舌打ちして、髪の毛を取る。しかし、取っても取っても黒い事に変わりない。元から黒い扉かと思うくらい、黒い。

「うげっ…」
扉を開けようとしてる間に、足に髪が絡まってきた。その感触に、鳥肌が立つ。早く出ようと扉に手を掛けたが、押しても引いても横に動かしても扉は動かない。
髪の毛と謎の物体は、どんどん絡んでくる。

「ヤバイな…」
焦って、上手く頭が回らない。落ち着け、と言い聞かせるが、こんな状況で落ち着けるわけがない。しばらく思考も、動きも止まっている間に、体は足下から黒くなっていく。

「手が…」
マズイ事に、考え込んでる間に手に絡み付き、上げる事が出来なくなった。

「…早くなってねぇか?」
最早どうする事も出来ず、ただ迫ってくる黒い物体を眺めて呟いた。最初より、明らかにスピードが上がっている。もう、諦めるしかないようだ。ただ、最後にこれだけはやっておかないと気がすまない。

「ディレックのアホー!!!!」

他に言う言葉はあるだろうに、パニック状態だとこれしか浮かばなかった。我ながら、語彙が少ないな…と悲しく思っていると、全てが黒くなった。

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「おやおや、何やらヒドイ事を叫ばれましたよ」
「ホント、兄様は失礼ですね〜。他に言う事なかったんですかね…」
食事を一時中断して、ギニアとディレックは呑気に話していた。

「そうですね、変な叫び声を発してくれるかと思いましたが…」
「『ほげ〜』とか期待してたんですけどねー」
残念と呟くと、ギニアは食事を再開した。

「刃君はどうします?」
「食べ終わってからでいいですよ〜」
こうして、刃はしばらく放置された。

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「…えーと…」
「ちょっとやりすぎましたかね…」
夕食を食べ終わって、刃を見に来た二人は、浴室のドアを見つめて固まっていた。ドアは、よくある曇りガラスになっていてるのだが、見るからに黒い。

「ディレックさん、何入れたんですか〜?」
「私の髪の毛と、貴女からいただいたウィッグと、これを…」
そう言って、ディレックは空の袋を取り出した。

「…ふえ〜るワカメですか…」
「よく刃君に言われるので」
言う時は、一日に何度も言われるので、実は気にしていたようだ。しかしそんな様子を見せずに笑顔で言うあたり、たちが悪い。ギニアは特につっこまず、ドアを開けようとしばらく格闘した。

「んー…引っ掛かってるんですかねぇ…」
「壊していいなら、壊しますけど?」
ギニアはしばらく考え込むと「お願いしま〜す」と言って、ディレックに任せた。
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