頂き物小説

□『〜Handle With Care〜』
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これは、ディレックが神界で仕事をするようになって、初めての夏に起こった出来事。

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「おや刃君、もう終ったのですか?」

ディレックは、隣の刃に驚いた声で問いかけた。いつもは面倒だと言って、なかなか仕事をしないし、場合によっては逃走する事もあるのだが、今日は珍しくずーっと仕事をしていた。そして、自分よりも先に終わらせている。珍しい事もあるもんだ、と彼は思っていた。

「お前も、早く終わらせろよ」
「あと少しですから…と、どうして急かすんです?」

自分より先に仕事が終ったら、嫌味の一つでも行って帰ると思っていたのだが、珍しい事に急かしてくる。さて、一体何を企んでいるのやら。

「ギニアから聞いてないのか?」
「………いいえ」

何か言われていたかと思い返してみたが、今日は彼女とは会っていない。他の手段での連絡もきていなかった。

「んじゃー…とりあえずさっさと仕事終らせろ。で、早く行くぞ」
刃は少し考えてからそう言うと、帰る仕度を始めた。

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「兄様、遅いですよ!!」

走ってきた刃に、ギニアは頬を膨らませて怒ったが、刃は荷物を放り出すと、謝りもせずにギニアの横を通り過ぎた。

「おや、浴衣ですか」
そんな彼の後を、ゆっくりと歩いてきたディレックは、ギニアの姿を見て挨拶もそこそこに言った。

「花火といえば、浴衣ですからね〜」
「花火?」

何も聞いていないディレックが首を傾げると、「夏と言えば、花火だろうが」と刃が間に入ってきた。

「花火、ですか…」
「ギニア、俺のは?」
「ハイハイ、兄様の分はあそこに置いてますよ」

何か考えてるディレックをよそに、目を輝かせて、ギニアが指差した方に、刃は走って行った。

「…ところで、あちらの二人は何してるんですか?」
先に花火を始めていた円と前を、ディレックは不思議そうに見ていた。煙と光の回転が見える。

「あれはですね…」
「兄弟喧嘩みたいなもんだな」
「兄弟喧嘩、ですか…」
「ヘビ花火VSネズミ花火です」
「それは、対決になるんですかね…」

苦笑しながら、罵り合っている二人を見ている横で、刃が袋から花火を取り出した。

「相変わらずだな、あいつらは。…撃ちこまねぇといつまでもやるな…」
呆れながらも、どこか嬉しそうに呟く彼の手には、ロケット花火が大量に握られている。

「に…兄様!!まさかアレを…」

「ファイヤー!!」

ギニアは止めようとしたが、遅かった。刃は、持っていたロケット花火全てに火をつけた。花火は、円と前めがけて勢いよく飛んでいった。

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「まったくもぅ…兄様ったら、花火持ったら人が変わるんだから」
ギニアは、円と前の手当てをしながら呟いた。

「花火好きなんですか?」
「火遊びが好きなんて、危ないですよねー」
ディレックの問いに、円が笑いながら答えた。

「一つ間違えれば、放火魔になりそうですね」
苦笑するディレックに「ホント〜」とギニアと円は笑った。

「…あれ…」
一人笑っていない前が、ギニアの浴衣を引いて刃の方を指差した。どうしたのかと見たギニアの顔色は、見る見る変わっていった。

「………兄様!!」

「あーあ…」
「おやおや」

前が指差す方を見ると、辺りは夜のはずなのにやけに明るく輝いていた。煙で、刃の姿はハッキリと見えない。

「何が燃えてるんですか、アレ…」
自分で確かめたくないギニアは、ガックリと頭を垂れていた。

「そうですね………とりあえず、植物が燃えてるようですよ」
「早く何とかしないと、危ないよ〜」
慣れているからか、特に危機感もなく、円は呑気に言った。

「そう、ですね…」
溜め息をつくと、ギニアは刃の所に向かった。

ギニアは、刃に何か言っているようだが、聞く耳を持たないようで、止める気配は見られなかった。しばらく怒っている声が聞こえたが、ギニアが何かしたようで、刃はその場に倒れた。しばらくして辺りの火は消えた。
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