07/07の日記
20:40
七夕
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〈SZ〉
「今夜は七夕なんだとよ」
夜もだんだん更けてきた頃、見張り番であるゾロの横でサンジは呟く。それを聞いたゾロはさほど興味も無いように「ふーん」とだけ言葉を返した。
「なんだよ。おまえ七夕しらねぇのか?」
「知ってる」
「へぇ、じゃどんな話か言ってみろよ」
にやにやとした顔のサンジがゾロをみる。絶対にわからないだろ?とでも言うような目を軽く睨んで、あきらめたようにゾロは口を開く。
「織姫、彦星という二人の男女がいた。二人は夫婦となるが、遊んでばかりで自分達の仕事をしなかった。怒った神は天の川で二人を引き離すが、あまりにも不憫だと言うことで一年に一回のみ、天の川の橋の上で逢うことを許した。それが七夕だろ。」
すらすらと考える素振りもなく出てきたあらすじは、サンジが思っていたまったくもってその通りの話で。サンジは少なからず驚いた。
「マジで知ってたんだな。」
「ガキの頃から何度も聞きゃ、嫌でも覚える。」
がしがしと乱暴に頭を掻きながら、ゾロは言う。そんなゾロを見ながら今度はサンジは「ふぅーん」と呟いた。
「それにしてもさ、ロマンチックな話だよな。一年に一度だけ許される逢引きなんてよ。」
タバコに火を点けながら、サンジは満足そうな言葉を洩らす。そんなサンジの言葉にゾロは眉間の皺を深くした。
「……俺はそうは思わねぇ」
「…?」
「愛だの恋だのに現つを抜かして、自分のやるべき事を見失っちまうなんざ…」
「………」
「くだらねぇ。」
吐き捨てるように言われた言葉は、サンジにとって大きすぎる傷となった。
サンジとゾロは所謂恋人同士で。回数は少ないが躰を重ねた仲である。愛している相手にここまで言われれば、誰だって少なからず傷つく。
好きだと告げた。
好きだと告げられた。
それでも、気持ちは簡単に揺らぐ。
(俺は、俺の存在はゾロにとって足枷なんだろうか?)
息が詰まりそうなほど、ただただ高みを目指す。そんな一直線なゾロを好きになった。
足枷になどなりたくは、ない。
だが、愛しいと叫ぶこの心はどうすればいい?
サンジは黙ってしまう。
急に下を向き、黙ってしまったサンジに気付き、ゾロはため息を洩らす。
「またウジウジつまんねぇこと考えてやがんな、テメェ。」
「つまんなくねぇよ!!俺は、お前がそう言うなら…俺は」
「テメェはいつも一人で突っ走る。俺の話を最後まで聞かねぇし。」
「……?」
「愛だとか、恋だとか…くだらねぇと思う気持ちは昔と変わらねぇ。」
「だけど。」
「だけどな。」
「お前がいるから、俺は俺の夢を見失わない」
「背中合わせて…対等なお前とのこの距離が。」
「俺には絶対に必要なんだ。」
「愛とか恋とか…そんな綺麗で薄っぺらいもんじゃなくて。」
「欲も何もかもぶつけられる、そんなお前との関係が。」
「俺は愛しいと思えるんだ。」
告げられた言葉は優しく。
向けられた視線は柔らかく。
重ねた唇は暖かくて。
サンジは腕のなかのゾロを離したくないと本気で思った。
そうだな、ゾロ。
俺たちは織姫や彦星みたいに愛や恋で盲目になんてならねぇ。
愛も恋も何もかも抱え込んで。
お互いの夢に向かって歩く為の支えに。
何よりも誰よりも深い所で繋がってる俺たちに。
天の川なんざ有って無いようなもんだな。
まぁ、取り敢えず。
一緒に、イこうか?
七夕な話?
離れることなんて、ない想い。
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