短編

□destruction
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お前は変わったなァ
と、血まみれの高杉は言った。
(え?なんで高杉は血まみれかって?そりゃあ、あたしが身体中ナイフで切ってやったからよ!浅く切ったつもりなんだけど、あちこち切り過ぎたかしら?いろんなところから血が出てるわ)
変わったってどこが?
先ほどの高杉の呟きにあたしは聞き返した。
このゲームが始まる前までは真面目でおとなしい優等生だったじゃねぇか
なのに今は狂った殺人鬼みたいじゃねぇか
これだけの言葉を言うにも精一杯そうに高杉は答えた。
(息切れしてたし)
狂った殺人鬼!良いわね、それ!今のあたしにぴったりね!
まるで普通の楽しい会話のようにテンションを上げてあたしは言った。
(あたしにとってはこれも楽しい会話だと思うけどね!)
……なァ、最期に言ってもいいか?
少し間を置いて高杉は真剣な顔をしながら言った。
なぁに?遺言?
真剣な高杉とは反対にあたしはちょっとふざけながら言った。
高杉はあたしの言い方が気にくわなかったのか、ちょっと眉間に皺をよせながらこう言った。

俺は狂う前のお前が好きだったんだ

と。
そう言うと高杉は息を引き取った。
というか、つまり、高杉は狂う前のあたしが好きで狂った今のあたしは好きじゃないということですか最期の発言は。
いや、別に構わないけどね?
あたしは今の狂ったあたしが気に入ってんだから!
なのになのになんでよ!
なんで今すっごく後悔してんのよ!
いいじゃない、高杉があたしのこと好きじゃなくても!
大体高杉死んだんだからもう好きだろうが好きじゃなかろうが関係ないじゃない!
高杉の馬鹿!
あんたのせいで今すっごく死にたいじゃない!
せっかく生き残ろうと思ってたのに!
生き残って高杉に告白……ってあれ?
待ってよ生き残っても高杉殺しちゃったら告白できないじゃん……。
なんでそんな簡単なこと今ごろ気づくのよ!
嗚呼、高杉起きて!
ごめん、謝るから、せめてあたしに告白させてよ!
本当はあたし高杉のこと好きなのよ!
ねぇ、高杉!



destruction
(高杉も彼女も何もかも、すべて壊滅)

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