暇つぶし人生
□白と銀
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矢張り此処は「聖闘士星矢」の世界らしい。
此処に来て早数ヶ月。店長に((以下略))。
近所の人や観光客から聞いた情報で、それとなく予想はしていた。
それを決定づける事があったのが一週間程前の事。
黄金聖闘士-蠍座のミロと同じく黄金聖闘士-水瓶座のカミュが店に訪れた。
(まぁ、その時はそっくりさん位にしか思ってなかったんだケド…)
その二日後くらいに、なんと、黄金聖闘士-魚座のアフロディーテが来たのだ。
これはもう認めるしかないだろう。
まぁ、でも。アレだ……。いろいろと疲れた。
主に泣きぼくろの麗人さんに。
『はぁあ……』
溜め息と共に白い煙を吐き出す。
注文の品も全部出来上がっているし、在庫もまだある。
お客さんもこの微妙な時間帯は入って来ない為、俺はレジの椅子に座り只ぼーっとしていた。
しかしそれは長くは続かない今日この頃…。
「溜め息なんかしてっと、幸せ逃げんぞー」
聞き覚えのある声と共に風に乗って香る煙草の匂い。
視線をそちらに向ければ、まぁ、其処には予想通りの人物が立っていた。
『溜め息しない人がいたら見てみたいものですねぇ。
あと、歩き煙草は危ないですよー』
俺の言葉に「まぁ、気にすんな」と言う様な顔で返し、店の腰掛けにドカリと座るこの相手。
心の中で軽くため息を吐き、右手に持った物を口に咥える。
「…未成年がそんなもの堂々と吸うなよ」
『ん、…あぁ。コレ、“電子タバコ”って言って、本物じゃないんですよ」
ハッカっぽいスースーした煙を吐き、相手に見せ付ける様に持っている手をひらひらと振る。
それに「へー」とだけ返すあたり、この人らしい。
あぁ、言い忘れたが今いるこの銀髪の人の名はデスマスク。言わずもがな聖闘士である。
因みに黄金で蟹座だ。
『つーか、アンタ。仕事とかはいいの?ここんとこ毎日の様に来てるけど』
「お前それ客にする言葉遣いかよ;;
仕事?書類にサインするだけだから直ぐ終わる」
『へー…』
相手のマネではないが、そう返すと笑われた。
こう…ニカッみたいな…。
「そう言やぁ……この前ディーテが来たんだって?」
『ディーテ?あぁ…あの麗人さん?来たけどそれがどうしたの?』
「ぁー…どうも思わなかったワケ?」
………、?
え、何が??
露骨に顔に出していたのか、デスさん(デスマスクの呼び方ね)は言葉を変えて再度聞く。
「お前アイツに何か言われたんだろ?」
ちょっと真剣な顔付きになったデスさん。
俺のこと心配してくれてるのかな…。
『…心配してくれてるの?』
「ぃや、まぁ…心配、だな」
視線を外しながらちょっと照れて言うデスさん。
それに、その言葉に…
何故か嬉しく思う――。
本当に何でか分からないけど、デスさんに心配されたのが
嬉しく思ったのだ…。
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