泡沫の人生
□第二夜
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――…チャプーン…ッ
広い湯船に浸かる金髪の麗人。
脚に付いた足枷を指先でなぞり上げる…。
「ティア、湯加減はどうかしら?」
扉越しに聞こえた声に、麗人-ティアは顔を其方に向ける。
『うん、丁度いいよ。有り難う、テティス』
「ふふ…なら良かった。着替えを持って来るわね」
『…有り難う』
離れて行くその背に、ティアは小さく礼をした。
『…っ……』
自分以外誰も居ないくなったその場所で、
ティアは両手で己の身体を抱き締める。
――違う、アレはもう何百年も前だ…っ
――忘れるんだ…忘れた方が良いんだッ!
―…ザプーンッ!
湯船から勢い良く立ち上がり、そのまま洗い場まで進む。
シャワーから冷たい水が流れ出る。
それを頭から被り、頭を冷やす…。
薄い金色の髪を雫が伝い、落ちる。
『…やな夢、見ちゃったなぁー…』
キュッと蛇口を閉め、薔薇の香りのシャンプーを手に取り、髪を洗う。
白に染まる髪を見て、ティアはふと思った。
―何時かは俺も、この泡の様に儚く消えていくんだよな…
と…。
『ま、その何時かが何時になるのやら…』
白銀色の瞳を閉じ、
暗闇の中、その日が来ることを刹那に願うティアであった…。
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