『最期』の無い人生

□踊りを舞う。 
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聖闘士の墓場―コキュートス…。


其処から暫く歩いたところに、蒼髪の青年は居た。



「…チッ……」



青年は苛立った様に舌打ちをすると、傍らにあった岩を殴り付けた。


青年と同じ高さの岩は粉々に砕け跡形もなく散った。



それでも青年の苛立ちは消えていないのか、青年は今日何度目かの舌打ちをした。





そんな時―…、何処からか歌声が聴こえた。


聞き覚えのない筈なのに、どこかで聴いた様な気がして…。



青年の足は歌の聞こえる方へと向かっていた…。


それは段々と速さを増していき、気が付いた時には全速力で走って居た…。








「――…僕は歌い続ける 君が僕を見つけてくれるまで…」



沢山の岩に囲まれた小さな花畑。


冥界で唯一花が咲くその場所で、黄緑色の髪を靡かせながら歌う少女が居た。



綺麗な澄んだ聲―…



間違いない。こいつだっ!!




青年はそう直感で思い、少女のいる花畑に歩み寄った。



――…ザッ…



「…っ…?!」



青年に気付いた少女は驚きのあまり目を見開き、一歩…また一歩と後ずさる。


それに合わせて青年は一歩…また一歩と前に歩みを進める。



「…何で逃げんだよ…」


「…あ、貴方には関係…ぅわッ!」


「……っ!!」



意識を青年に集中させすぎて足を滑らせてしまった少女。


尖った岩場に頭を打つ前に、間一髪青年が少女の腕を掴み己の方に引き寄せた。



華奢な少女はすっぽりと青年の腕の中に収まる。



「ったく…危ねぇだろッ!」



腕の中に居る少女にそう言うが、状況が飲み込めていないのか


紫色の瞳を大きく開き数回瞬きを繰り返していた。



「!…はっ、離せ…!!」



やっと我に返った少女は青年から離れ様とするも、青年が少女の腕を掴んで離さない。


それに観念したのか、少女はその場に座りこんで顔を伏せてしまった。



そんな少女を見て青年は溜め息を吐き出すと、ドカッとその場に座った。








「…なぁ…」


「何ですか…」



あれから暫しの間沈黙が流れたが、青年の言葉にそれが破られる。



「お前、何で此処で歌ってたンだ?」


「……貴方に関係ないでしょ…。貴方こそ、こんな所で何をしていたんです?」


「俺は…お前に呼ばれて来た」


「私に…?」



青年の言葉に少女は顔を上げて青年を訝しげに見つめる。



「『助けて』って、聞こえたから来たンだよ」



その言葉に少女は目を見開いた…。



「まっ…そうゆー事だから」



青年は少女の腕を離すと、すぅ…と少女に手を差し出した。



「俺の名前はカルディア。


暇つぶしには丁度良いしな。助けてやるよ、チビ」



ニッと笑う青年―カルディアに、少女は唇を噛み締め、差し出された手を掴んだ。



「わ……俺はキサラギ。言っておくが、俺は男だからな。それにチビじゃない!」



ケラケラと笑うカルディアに少女―キサラギは胸が穏やかになるのを感じた―…。








想いは届く…













-踊りを舞う。 end-
(歌:Ta-lila〜僕を見つけて〜)
 

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