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□秘めやかな君
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いつも通り、彼女の後ろを遅れて歩く。
少しだけ漂う薔薇の香りに誘われるように
今日こそは見失わないようにと、彼女から目を離さずに歩く。
目の先を歩く彼女は人混みに紛れると僕の前から姿を消した。
「また、駄目だった…」
「なんだ、また憧れのライトさんに声かけられなかったのかよ。」
机に突っ伏して嘆く僕に軽く声をかける友人を睨む
「だって…またあの辺りで見失っちゃうし」
「別に放課後にあとつけ回して声かけなくても、学校で声かけろよ」
笑う友人にそれができたら…とも思うが、僕が彼女の後をついていくのはもう一つ理由がある。
「それも、そうだけど…心配でもあるんだ…。ライトさんがちゃんと家まで帰れるかって…それに、その延長線でライトさんのお家が分かればなぁ…なんて…。」
そう言った僕の顔がまじまじと見つめる友人はゆっくりと口を開いた。
「いや…俺はお前の方が心配だよ。それ、ストーカーじゃねぇか!今日からやめろ!な?」
「いやいやいや!それはない!ストーカーじゃない!…と思う。後をつけてどうこうしたいとかじゃないし!」
否定したけど友人の顔色は晴れない
「いや、だからそういうのがストーカーだろ…」
「ほんと、そんなつもりはないんだって…。ただ、ライトさんのこと、なんでも知りたいって思ってるだけなんだ。」
確かにこんなの気持ち悪いよねと思ってしまい、だんだんと声が小さくなる。