***

□真摯
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この日、真新しいスーツに身を包み
目の前の建物を見ている男

ホープ・エストハイムはただ一人、動くことなくそこに立っていた



「エクレールさん…」

意を決したホープは一歩踏み出した


「本日付けで、本庁に配属されました。ホープ・エストハイムです。

よろしくお願いします。」

目の前の威厳を纏ったような男は、刑事部・刑事課・特殊捜査班の警部

ホープの直属の上司にあたる人物だ。

「話は聞いている。刑事部・刑事…あぁっ!めんどくせぇっ」

男は声を荒げる

「警部のサタナカだ。

エストハイム、お前にはアイツと組んでもらう」

サタナカが指を指す方をみると、一人の女性がデスクで作業をしていた

ホープの視線は、女刑事に釘付けになっている

サタナカはそんなホープの様子に少し納得しながら口を開く

「“ここ”に女がいるのが珍しいか?

それとも、あの容姿にやられたのか?」

サタナカの問いに、ホープはそんなことはないと
すぐに答えたかったが、すんでのところで言いとどまった

事実と真実がぐちゃぐちゃになって自分の口からは嘘しかでないと思ったからだ

そんなホープを余所に、サタナカは話を続ける

「まぁ、ああ見えてもアイツはその辺の男刑事より役に立つ

おいっ!ライト、こっち来い」

ホープは、サタナカの言葉に疑問を持ちながらも

“ライト”と言う女性がこちらに歩いてくるのをじっと見ていた


「何か?」

少し不機嫌な顔つきで凛とした声を響かせる

何も変わっていないと内心安心するホープ

「エストハイム、こいつは警部補のライトニングだ。今この瞬間からお前たちはペアを組んだ。分かったな」

「警部っ」

ライトニングは声をあげて反論する

「いいか、刑事は一人で行動するのは許されない。

お前のことは今まで見逃してきたが、今日までだ。規律には従え。」


押し黙る彼女はホープの方へ向き直る

「警部補のライトニングだ。ライトと呼んでくれ」

ホープは怪しむ表情でライトニングを見る

「よろしくお願いしますライトさん。

ですが、本当にライトさんですか?」

突然のホープの言葉に、ライトニングは手を強く握りしめたが、すぐ力を抜きするりとかわす

「どういう意味だ?私はライトニングだ。」

「そうですか、」

ホープは腑に落ちなかったが、これ以上の穿鑿はやめた



この日からホープとライトニングは対となった。

 
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