LR

□又候
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“はい!こちらっーー”

元気よく耳元で放たれた言葉は途切れ、先程の者とは正反対の落ち着いた声が聞こえる

“求人情報を見たのか?”

落ち着いた声の主の無愛想な物言いにこちらも少し身構える

「あぁ」

私も十二分に無愛想だ。

“………っ、採用です。では、今から言うーー”

耳元で淡々と流れていく言葉を拾い起こし文字にする

通話が終了し、ホープを見るとホープは膝を抱えて縮こまっている

「ホープどうした?」

「うぅ、エクレールさんが…あんなことするからです。

そんなことより!面接の日はいつですか?」

不安げに揺れる目に、何故か心を擽られた

「いや、採用された。」

「え!!?」と大きな声を出し、驚愕の顔つきを惜しみもなく晒すホープ

「だっ、駄目ですよ!そんな電話一つで採用するところ!怪しすぎますっ。」

ホープの言うことは最もだったが、私はそんな常識も吹っ飛ぶくらいに何故か惹かれているんだ。

まるで、導かれるようにーーー


「エクレールさん…僕、貴方のためにこの仕事を選んだんですよ。
そりゃあ、趣味でもありますけど…」

ホープは再びきつく私を抱きしめる

拗ねるとくっつくのが癖か?

「エクレールさんは僕と一緒の時間減ってもいいんですか?」

濡れた瞳で私をみつめるホープは女の私なんかよりも色っぽい

ホープは、在宅勤務のプログラマー

仕事は、主にセキュリティーソフトの開発や、スクリプト作成、

趣味で、ゲームプログラムをしている

私と居たいがために選んだ仕事だと言っていた。

“いつか、エクレールさんとここで住むときにずっと、ずっと一緒に居たくてこの仕事に決めました。”

個人名義での仕事らしく、報酬も驚くほどあると言っていた。

だが、職業柄なのか自分の食生活などには無頓着で、私がここに来るまでは仕事が詰まると飲み食いせず、不眠不休で自室に引きこもっていたと…スノウから聞いた

今までそんな素振りは一度も見せていないが

“エクレールさんに寂しい思いをさせるわけにはいきませんから”

そう言っていたホープは、私の気付かないところで無理をしているのかもしれない。

私が起きているときは殆ど私に引っ付いているし、私が寝ている間に仕事をしているとしたら…と考えるとホープの身体が心配だ。

だからこそ、少しでもお金を自分で稼ぐため、ホープを休ませるために仕事をするんだ。
 
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