桜色ワルツ
□第七訓
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ルイは、左腕の着物の裾をあげた。
「…そ、その腕…!!!」
ルイの腕は、肘のあたりまでの長さの白い手袋で隠してはあったが、そこから肩にかけては鋼鉄の義手であった。
万事屋の3人は動揺を隠せない。
妙以外は見ていなかったので、驚くのも無理はない。
『機械鎧〈オートメイル〉っていう義手なの。 私の国は戦争が多くてね、義肢が発達してるのよ。神経と接続されてるから、ちゃんと動かせるし』
無理して笑う彼女の肩には痛々しい傷が残っている。
妙を含めた4人は、暗い表情になってしまった。
「…ルイも、戦争で腕を怪我したアルか?」
『いいえ、私はね…禁忌を犯した。
そのための代償として、腕を持って行かれた…』
―錬金術は物質を理解・分解・再構築する科学なり
されど万能の業にはあらず、
無から有を生ずること能わず
何かを得ようと欲すれば、必ず同等の対価を支払うものなり
これすなわち錬金術の基本、等価交換なり
錬金術師に禁忌あり、そは人体練成なり
これ何人も犯すことなかれ―
『私…兄さんと一緒に、病気で死んだ母を、生き返らせようとした。
それが禁忌であることなんて知っていたのに』
ルイはつぶやくように話し始めた。
『錬金術は、手順を間違えればリバウンドがおきるの。
度合はさまざまだけど、失敗すると必ず術者に多大なダメージを及ぼす…
そして私は腕を、兄さんは身体も魂も失った』
「…身体も、魂も…!!!?」