薄桜鬼×華鬼
□鬼ヶ里
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「ずいぶんと貧相になったな」
侮蔑をこめて、華鬼は早苗に声をかける。
「お母さん……!」
はるか後方から絞り出すような声で、神無が叫んでいる。
「神無をかえして」
早苗は華鬼を見詰めたまま、小さいが鋭い声でそう言った。
その声が聞こえ神無が、驚いたように立ち止まった。
「神無をかえして。あたしのたった一人の娘なの――」
早苗は、一度として神無に微笑みかけたことはない。まるで何かを恐れるように、視線を合わせることすらなかった。
その早苗が、華鬼から視線をはずし、初めてまっすぐ神無を見詰めていた。