絶園の宮
□第一話
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『檻』のつくり方を海葉から指導された左門はずっと引っかかっていることを海葉に聞くことにした。
「海葉姫様。あの、本当にいいんですか…?」
主語のない話に海葉は首をかしげる。
「何が?」
「貴女様の妹、葉風様は私たちの手によって死ぬかもしれないんですよ?」
左門の言葉を聞いた海葉は目をパチクリさせ、フッと笑い、
「これで死んだら、葉風のはじまりの樹からの加護がそれまでだっただけのこと。それに、本当に死にそうになったら私が葉風を戻すから問題ないわ。」
海葉の言葉に左門は自分で聞いておきながらはぁ…。としか返事ができなかった。
「それにね」
「はい?」
「あの娘ははじまりの姫宮として今まで望んできたことは全て叶えられてきた。少し、あの娘には試練が必要なのよ。」
この言葉に流石に左門も葉風に同情した。自分に初めて降りかかる試練があまりにも大きすぎやしないかとは思った。
だが、ここで左門が海葉に意見しても、海葉に言いくるめられて終わるだろう。それに、左門も今回ばかりは葉風が邪魔だ。ここは海葉の言うとおり、葉風には試練の道を歩んでもらうことにした。
「ありがとうございます、海葉姫様。」
左門が海葉に頭を下げ、礼を言うと海葉は意外そうな顔をする。
「あら、お礼を言われることなんてしていわ。 私はあの娘に試練を与えただけ、あとは左門達の好きにすればいい。案は教えた、私はこれからは中立として立つから。」
それを聞いた左門はもう一度海葉に頭を下げ、踵を返した。
葉風を樽詰めにするための準備をするために………。