other

□丑の時参りの願い
1ページ/1ページ


「はぁぁ〜。とてつもなく遅くなってしまったネ」


夜に酢昆布が切れてしまい、銀時には黙って買いに出たはいいが、こんな時間ではどこも開いておらず、開いてたとしても酢昆布は置いてなかったりで、ようやく買えた時には、日にちが変わっていた。


神社の前を通りかかったとき、カーンカーンと何かを叩く音が聞こえた。


「何アルかこの音?近所迷惑ネ」


音の正体を知る為、臆することなく神社の奥へ進む。


「むっ、サド野郎何やってるヨ」

「チャイナ?」


白装束に頭に蝋燭をつけたサド野郎沖田がいた。
彼の後ろには、木に打ち付けられた藁人形がある。

確か、あれは嫌いな奴に呪いをかけるときに行う地球の儀式。
神楽はテレビで見た記憶を思い出す。


「お前誰を呪ってるネ?」

「はぁ…なんでいるんですかィ」


溜め息をつき、頭につけた蝋燭をとる。


「丑の時参りは誰にも見られちゃいけないんでさァ」

「マジでアルか?見られたらどうなるネ?」

「呪いをかけた方が死んじまうんでさァ」

「わっ、ワタシのせいアルか!?」

「そうなりまさァ」

「どうすれば死なないネ!このままじゃ目覚め悪いアル!!」

「呪いをかけようとした相手とキスするんでさァ」

「じゃ、さっさとするネ!誰呪ったネ?どうせマヨ野郎だろ?」

「チャイナ」

「…はぁ?」

「だから、呪った相手はてめぇでさァ」

「なっ、ななな!!何呪ってるアルかてめぇ!!!!」

「…チャイナ、目閉じな」


肩を両手でガッチリと掴まれ、沖田の顔がだんだん近くに迫ってくる。
栗色の睫毛が長いことや、真っ赤で大きな目や、日中見廻りしているのに白い綺麗な肌。肩に置かれた、意外と男らしい手。全てが神楽の思考をかき乱す。


「えっ、まっマジアルか?」

「俺、死んじまいますぜェ?」

「うぅぅ…!分かったアル!さっさとするヨロシ!!」


唇を合わせるだけの軽いキスだが、神楽はビクリと身体を強ばらせる。


「…これで大丈夫あるか?」

「大丈夫でさァ」

「よかったアル」

「…そっ、それは反則でさァ」


純粋な神楽の笑顔に耐えられなくなった沖田は、紅くなった顔の口元を手で押さえ、顔を背ける。そして、異常なほどの罪悪感に襲われる。


「…チャイナごめん。嘘でさァ」

「何がアル?」

「キスしたら死なないってとこ…」

「はぁ!?じゃ、じゃぁ!お前死んじゃうアルか!?」


クソッ、土方相手なら全く罪悪感なんて湧かないのに…。
神楽はいまだに沖田の心配をし、眉を下げ上目遣いで見つめる。


「丑の時参りは、正確にいうと自分の祈願成就のためにやるもんなんでさァ」

「?」

「んで、死ぬってのは間違い。呪いが自分に返ってくるってのが正しいんでさァ」

「えっと…?今回はその祈願が返ってくるってことアルか?」

「そうでさァ」

「お前、何を願ったネ?」

「…えっ、あっ…その」


言えるわけねェだろ!!
急な攻撃にめっぽう弱い沖田は頭の中が真っ白で、口をぱくぱくさせることしかできなかった。


「ハッキリするね!!」

「お前とキスしたい……」

「へっ?」

「おっ、俺は帰りまさァ!!」

「ちょ!ちょっと待つアル!!」


恥ずかしさのあまり走り出していた。
神社の階段を一気に降りる。
しかし、負けじと神楽も追いかけてくる。

二人とも尋常じゃない速さで夜の町を走る。


「止まれェェエ!!!」

「ぐはっ!!?」


前を走る沖田に、神楽は見事な跳び蹴りをお見舞いした。
沖田に乗り掛かる形で、地面に倒れこむ。


「藁人形に頼らなくったってキスぐらいしてやるアル!!」

「…チャイナ?」

「でも!ワタシ軽い女じゃないネ!ちゃんと言うべきこと言ってもらわないとアル!」


神楽の言ってることの意味が分かり、沖田は微笑んだ。


「好きでさァ。チャイナ」

「ワタシもアル」


今度はどちらともなく唇を合わせた。

――――――――――
あとがき

なんか沖田くん乙女で、神楽ちゃん男前ですね(*´∀`)

丑の時参りのくだりは、Wikiの情報を少々都合よく脚色したものです
良い子の皆は、祈願成就するからって丑の時参りしないでねwww

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ