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□丑の時参りの願い
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「はぁぁ〜。とてつもなく遅くなってしまったネ」
夜に酢昆布が切れてしまい、銀時には黙って買いに出たはいいが、こんな時間ではどこも開いておらず、開いてたとしても酢昆布は置いてなかったりで、ようやく買えた時には、日にちが変わっていた。
神社の前を通りかかったとき、カーンカーンと何かを叩く音が聞こえた。
「何アルかこの音?近所迷惑ネ」
音の正体を知る為、臆することなく神社の奥へ進む。
「むっ、サド野郎何やってるヨ」
「チャイナ?」
白装束に頭に蝋燭をつけたサド野郎沖田がいた。
彼の後ろには、木に打ち付けられた藁人形がある。
確か、あれは嫌いな奴に呪いをかけるときに行う地球の儀式。
神楽はテレビで見た記憶を思い出す。
「お前誰を呪ってるネ?」
「はぁ…なんでいるんですかィ」
溜め息をつき、頭につけた蝋燭をとる。
「丑の時参りは誰にも見られちゃいけないんでさァ」
「マジでアルか?見られたらどうなるネ?」
「呪いをかけた方が死んじまうんでさァ」
「わっ、ワタシのせいアルか!?」
「そうなりまさァ」
「どうすれば死なないネ!このままじゃ目覚め悪いアル!!」
「呪いをかけようとした相手とキスするんでさァ」
「じゃ、さっさとするネ!誰呪ったネ?どうせマヨ野郎だろ?」
「チャイナ」
「…はぁ?」
「だから、呪った相手はてめぇでさァ」
「なっ、ななな!!何呪ってるアルかてめぇ!!!!」
「…チャイナ、目閉じな」
肩を両手でガッチリと掴まれ、沖田の顔がだんだん近くに迫ってくる。
栗色の睫毛が長いことや、真っ赤で大きな目や、日中見廻りしているのに白い綺麗な肌。肩に置かれた、意外と男らしい手。全てが神楽の思考をかき乱す。
「えっ、まっマジアルか?」
「俺、死んじまいますぜェ?」
「うぅぅ…!分かったアル!さっさとするヨロシ!!」
唇を合わせるだけの軽いキスだが、神楽はビクリと身体を強ばらせる。
「…これで大丈夫あるか?」
「大丈夫でさァ」
「よかったアル」
「…そっ、それは反則でさァ」
純粋な神楽の笑顔に耐えられなくなった沖田は、紅くなった顔の口元を手で押さえ、顔を背ける。そして、異常なほどの罪悪感に襲われる。
「…チャイナごめん。嘘でさァ」
「何がアル?」
「キスしたら死なないってとこ…」
「はぁ!?じゃ、じゃぁ!お前死んじゃうアルか!?」
クソッ、土方相手なら全く罪悪感なんて湧かないのに…。
神楽はいまだに沖田の心配をし、眉を下げ上目遣いで見つめる。
「丑の時参りは、正確にいうと自分の祈願成就のためにやるもんなんでさァ」
「?」
「んで、死ぬってのは間違い。呪いが自分に返ってくるってのが正しいんでさァ」
「えっと…?今回はその祈願が返ってくるってことアルか?」
「そうでさァ」
「お前、何を願ったネ?」
「…えっ、あっ…その」
言えるわけねェだろ!!
急な攻撃にめっぽう弱い沖田は頭の中が真っ白で、口をぱくぱくさせることしかできなかった。
「ハッキリするね!!」
「お前とキスしたい……」
「へっ?」
「おっ、俺は帰りまさァ!!」
「ちょ!ちょっと待つアル!!」
恥ずかしさのあまり走り出していた。
神社の階段を一気に降りる。
しかし、負けじと神楽も追いかけてくる。
二人とも尋常じゃない速さで夜の町を走る。
「止まれェェエ!!!」
「ぐはっ!!?」
前を走る沖田に、神楽は見事な跳び蹴りをお見舞いした。
沖田に乗り掛かる形で、地面に倒れこむ。
「藁人形に頼らなくったってキスぐらいしてやるアル!!」
「…チャイナ?」
「でも!ワタシ軽い女じゃないネ!ちゃんと言うべきこと言ってもらわないとアル!」
神楽の言ってることの意味が分かり、沖田は微笑んだ。
「好きでさァ。チャイナ」
「ワタシもアル」
今度はどちらともなく唇を合わせた。
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あとがき
なんか沖田くん乙女で、神楽ちゃん男前ですね(*´∀`)
丑の時参りのくだりは、Wikiの情報を少々都合よく脚色したものです
良い子の皆は、祈願成就するからって丑の時参りしないでねwww