★story★
□A Secret Sign
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A Secret Sign -side S-
「ん……」
夜明け前、薄明かりの落ちるベッドの上。
僕の隣で、グァンスが寝返りを打つ。
よっぽど疲れてるみたいで、まだ当分、起きそうにはない。
上手く寝付けなかった僕は、一晩中、その寝顔を見つめていた。
すっと通った鼻梁のライン。
形の良い唇、長い睫毛。
何度直しても布団の端から覗く、鍛え上げられた肩から胸にかけての造形。
西洋の彫刻みたいに綺麗だ、と思う。
少し傾げられた首筋に、ふと、視線が吸い寄せられる。
どこを見ても完璧な、彼の身体の中で、
僕が唯一、嫌いな場所。
その一点に、冷たくなった指先で、そっと触れた。
「……んっ……」
冷たい感触を嫌がって、グァンスが身じろぎする。
僅かに眉間に寄せられる皺。
起きてる時のグァンスとは全然違う、色っぽい表情。
今この瞬間のお前は全部、僕だけのものだ、って耳元にそっと囁く。
グァンスと二人だけの夜を重ねるたび、
どうしようもなく膨らんでいく、僕の独占欲。
全部、僕のものにしたい。
出来ないと思い知らされるたび、そう強く願ってしまう僕は、弱い。
そっと身体を起こして、彼の白い首筋を見下ろす。
そこにある、小さな黒子が、僕は嫌いだ。
ソンジェヒョンと同じ場所にある、そっくり同じ小さな印を
「お揃い」って冗談めかして笑ってたグァンス。
ゴニルとお揃いの指輪も
ジヒョクとお揃いのブレスレットも
僕と過ごす夜には全て外させるのに。
それだけは、絶対に外せない、二人を繋ぐ秘密の印みたいで、
ここだけは永遠に僕のものにならない気がして、
消してしまえたらいいのにと思う。
「………っ」
せめて僕のつける印で、上書きしてやりたくて
噛み付くような口付けを落とすと
うっすらとグァンスが目を開けた。
「……ン、モ?」
吐息交じりの声で名前を呼ばれるだけで、
もう、僕の世界には、この男しか存在しなくなる。
ゆっくりと背中に回された腕の温もりを感じながら
僕はまた、嫉妬と欲情の深い海に溺れてゆく。