Another Category

□世界で一番、遠い場所。
1ページ/1ページ

今年の冬は、いつになく冷たい。


今朝もソウルは一面の雪。

起き抜けの、まだ少しぼうっとした頭のまま

俺はベランダの窓を開けて

冷たい風を頬に受けながら

眼下に広がる街並みを眺めている。



この部屋に住むようになってから

こうして一日の始まりに

眺めることが日課になってしまった景色。



あのビルの群れの、もう少し先。

白から薄いオレンジに色を変える空が

山の稜線の向こうに消える、少し手前に

お前の住むマンションが見えるんだ。



歩いてだって行ける

ほんの少しの距離なのに。

うざいくらい傍にいた日々が嘘みたいに

ろくに会えないまま過ぎた、

3年と4ヶ月。



お前の隣は、今、

俺にとって

世界で一番、近くて遠い場所。



なぁ、こんなに長い間、離れていても

ずっと変わらずにお前を愛し続けられるなんて

正直自分でも思ってなかったんだけど

昨夜、電話の向こうでお前は

どうしてあんなに自信たっぷりに笑ってたの?


「お前には、俺以上の相手はいないから」なんて

神様しか知らないはずのことを

いつからお前は知ってたの?




俺たちを繋ぐ道は、今も凍ったままで

まだ当分は、迂回路さえ見つけられそうにない。


今自分がいる場所で

自分で選んだこの場所で

できることを精一杯やるだけ。

後悔はしていないけど


春の陽射しみたいなお前の笑顔が

また俺に降り注ぐ日が、待ち遠しい。


なぁ、ユノ。


俺達の間に降り積もった

この雪は

いつ頃溶けるだろうか。





-Fin-

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ