暴君アリス

□ジャックとキミのき。
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「アリス、呪われよ」


あぁ、うるさい。
死にかけフクロウを蹴飛ばして、私は惨劇を見下した。
ドードー鳥やオウムやアヒル。
カニやネズミも横たわる。
あぁ、赤く染まった羽も、僅かに痙攣している手足も。
久々、私をあたためた、赤い液体もいとしくて。
生きていられて良かったねと。
心からの笑みで呟いた。


 海色アリス。止めて御覧。


この雨。そして私も止めて。
泣いてちゃ、
なんにも出来ないでしょう?


 この 惨劇を止めてみなさい。


それが出来なきゃ男じゃないわ。
やっぱり一度ぶん殴らなきゃ。

 …なんて、

あたし、いまさらさみしいの。
雨が止まずに降り注ぐこと。


「自業自得というのかしらね」


血塗れアリス。あたしのこと。
ウサギの逃げた屋敷を見据える。

 ―…私の、

時を返してもらうわ。
終わる権利を返してもらうわ。
こんな命なら要らないの。
私のままで生きられないなら、


「…ここは、もういや」


森がうるさい。倒れそう。
だけど、倒れるわけにはいかない。
あたし、
あたしには負けられない。


きっとおわれたらしあわせね。
くるしまなくていいんですもの。
あたしも。
そして『アリス』も、らくだもの。



 …ほんとの惨劇はこれからよ。



アリス。止めて御覧なさいな。
そこで泣いてちゃ変わらない。
さぁ、捕まえて御覧なさい。
…あたし、そしたら終われる気がする。


「…長く、悲しい話(テール)だね」

「あなたの
尻尾(テール)には負けるわよ」


しつこく生きてたネズミを笑い、私はウサギの屋敷へ向かう。
私の辿るその道には、標のように点々と。
真っ赤な血液の跡が続いた。

* * *

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