暴君アリス

□ジャックとキミのき。
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− * * * −




「…っ、」


今度はコーカス・レースの彼ら。
空は、ついに真っ黒になる。


「「………。」」


アリスは笑う余裕をなくして。
ぎゅっと目を閉じ、耳を塞いだ。
傍にいるのに、
僕らは何も出来なくて。


「っなんで…、」


悔しい。アリス、傍にいるのに。
痛む あなたを見てるだけ。


「「お茶、いれるね」」


ひとりにしたら、どうなるだろう。
下僕は、どこへいっただろう。
ほっとけない。
そしたら壊れてしまうから。

 …嫌いだ、アリス。

強いフリして笑うあなたが。
涙を流して誰かに縋れば、僕らはなんとも思わないのに。
…あぁ、
つまりはあなたでなければ、
きっとこんなになりはしない。

二人の鼓動は速いリズムで、痛いほど胸(ココ)で主張をしてる。

 惨劇。惨劇、血塗れの森。

隙間なく音を喰らう雨。
いっそ屋根がなくなって、アリス、あなたが音に埋もれて。
そしたら、
きこえなくなるのだろうか。

アリスを泣かせる奴らの悲鳴は。


「「アリス、」」


雨も我慢するから。
ちゃんと平気だと笑うから。
悲しませたりしないから。
心も体も痛くしない。

ちゃんと、僕らが傍にいる。



「「…大好きだよ」」



驚いたように強張った。
テーブルに置いた紅茶のカップの、微かな音が雨に喰われる。
僕らは俯くアリスを見つめた。
僕らよりずっと細い肩。
少し苦しくて胸を押さえた。


「…ハンプティ」「ダンプティ…」

「「誓うよ、アリス」」

「僕らは」「あなたを」

「「ひとりなんてしないから」」



 惨劇。惨劇、血塗れの森。

それでも僕らは見つけたから。
呪いの双子は見つけたから。

 ―…僕らの 願い事。



「「あなたが
しあわせになれますように」」



* * *

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