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「…っ、」
今度はコーカス・レースの彼ら。
空は、ついに真っ黒になる。
「「………。」」
アリスは笑う余裕をなくして。
ぎゅっと目を閉じ、耳を塞いだ。
傍にいるのに、
僕らは何も出来なくて。
「っなんで…、」
悔しい。アリス、傍にいるのに。
痛む あなたを見てるだけ。
「「お茶、いれるね」」
ひとりにしたら、どうなるだろう。
下僕は、どこへいっただろう。
ほっとけない。
そしたら壊れてしまうから。
…嫌いだ、アリス。
強いフリして笑うあなたが。
涙を流して誰かに縋れば、僕らはなんとも思わないのに。
…あぁ、
つまりはあなたでなければ、
きっとこんなになりはしない。
二人の鼓動は速いリズムで、痛いほど胸(ココ)で主張をしてる。
惨劇。惨劇、血塗れの森。
隙間なく音を喰らう雨。
いっそ屋根がなくなって、アリス、あなたが音に埋もれて。
そしたら、
きこえなくなるのだろうか。
アリスを泣かせる奴らの悲鳴は。
「「アリス、」」
雨も我慢するから。
ちゃんと平気だと笑うから。
悲しませたりしないから。
心も体も痛くしない。
ちゃんと、僕らが傍にいる。
「「…大好きだよ」」
驚いたように強張った。
テーブルに置いた紅茶のカップの、微かな音が雨に喰われる。
僕らは俯くアリスを見つめた。
僕らよりずっと細い肩。
少し苦しくて胸を押さえた。
「…ハンプティ」「ダンプティ…」
「「誓うよ、アリス」」
「僕らは」「あなたを」
「「ひとりなんてしないから」」
惨劇。惨劇、血塗れの森。
それでも僕らは見つけたから。
呪いの双子は見つけたから。
―…僕らの 願い事。
「「あなたが
しあわせになれますように」」
* * *