暴君アリス
□番外編
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− * * * −
最初のアリスが笑ったの。
時計に触れてにっこりと。
「私はアリス。ずっと一緒よ」
その次のアリスも、そのまた次のアリスも、また。
「私はアリス。ずっと一緒よ」
12番目のアリスもね、
確かに時計に笑ったの。
「私はアリス。
ずっと一緒よ」
「私がアリスで在る限り。」
「アリス」はね、それからずぅっと有限で。
いつかは「アリス」でなくなるの。
全てのアリスの記憶は此処に。
「だからね、ボクは恐いんだ。
いつかアリスでなくなること。」
三月ウサギも帽子屋も、
ハンプもダンプも羨ましい。
もう堕ちなくてもいいんだろ?
「ボクは、アリス。
―…ずぅっと一緒。」
此処は不思議な不思議の森。
アリスの願いは森の餌。
アリスでいなきゃ。
だけど いつまで
―…アリスでいられる?
「―…へいき。ボクは、」
「―…アリス?」
アイネ、クライネ、
キミらのために。
ボクはアリスで在り続けるよ。
きっと、きっと―…
「お願い、《 》。」
「 つ ら い な ら も う 、 」
此処は不思議の森だから。
猫の声など届かない。
「アリスでいなきゃイミがない。」
有限アリスは笑ったの。
時計のためじゃないけれど。
「ボクはアリス。
ずっとアリスでいてあげる」
―…愚かで悲しい約束を。
――fin.