暴君アリス
□暴君アリス
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ウサギの時計はアナタの時間。
アナタの時間はウサギの時計。
奪って、攫って、逃げる から。
――アリス、アリス。
始めましょう。
悲劇と喜劇と恐怖劇。
アナタの望むシナリオへ。
此処は不思議な不思議の森。
不思議の森のその入り口。
全ての戯曲の始まりの場所。
奏でる音色は アナタ次第。
《02:To White Rabit.》
私を包んだ優しい光。
ちらつく銀はナイフの輝き?
「―…何をしたの?」
望んで縋った私の悪魔。
ウサギの形をした悪魔。
品の良さげな綺麗な顔に、優しげな笑みを浮かべて佇む。
「私はウサギ。アナタはアリス?」
歌うみたいに紡がれる。
ウサギは笑って時計をかざした。
早く、殺して 私の悪魔。
誰かの代わりに生きるのは もう。
「アリス、アナタが嫌いです。
だから、奪って逃げるから。」
「…?」
「迷って、アリス 此処まで堕ちて。
私の、我らの所まで…。」
「…貴方、まさか、」
「ウサギの時計はアナタの時間。
永久の時を不思議の森と…。」
「私の―…時間を、」
「―−‐‥。」
悪魔はにっこり微笑んだ。
懐中時計の針が踊る。
見惚れる私の目の前で、悪魔はもう一度呟いた。
「ウサギの時計は
アナタの時間。」
迷って、アリス。
此 処 ま で 堕 ち て 。
あぁ―…ダメよ、
これじゃあ死ねないわ。
時が奪われたのならば、血を流すことは出来ないものね。
追ってあげるわシロウサギ。
小さなナイフをお守りに。
ウサギは私を嘲笑う。私も彼を、嗤ってやった。
此処は不思議な不思議の森。
不思議の森のその入り口。
タイトル未定のバカげた戯曲。
少しくらいは踊ってあげる。
「私はリアス。リアス=プレイア」
グランギニョルが 始まります。
私が私で 在るための。
* * *