暴君アリス

□暴君アリス
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− * * * −




「アリス」 「アリス」




「「どうして此処に?」」




「此処は不思議な不思議の森」
「不思議の森のその入り口」






 「いけないよ」

「「いけないよ」」

「いけないよ」 









「「この森に入っては、


―…いけないよ。」」 







「「アリス」」



「「どうせアリスでなくなるから」」



「アリス…」 「…アリス」






「「 あ な た が き ら い だ 」」





「良かったね」 「良かったよ」

「「僕らはもうアリスじゃない」」

「良かったね」 「良かったよ」




「「ハンプティ・ダンプティ」」




「もっと」 「もっと」



「「ま ざ り あ っ て 」」



「ひとつに」 「なろう」

「「アリスにはなりたくない」」



「アリス」 「アリス」

「「あなたの世界にお帰りよ」」



「望むものは」 「此処にはない」

「アリス」 「アリス」





「「 だ い き ら い だ よ 」」










− * * * −






「―…アリスじゃないわ。」

「アリスですよ。」


貴方が貴方のままなら。
それはアリス。純潔の証。

眉をしかめる姿さえ 神聖。



「アリスじゃないのよ、悪魔」

「悪魔じゃないですよ、アリス」


笑ってみせる。にっこりと。

黒いワンピース。黒のストライプニーソックス、黒い靴。
ただ一点だけ赤、カチューシャのリボン。
金色の髪、青い瞳。
透き通った美貌が、歪む。



「私はリアス。リアス=プレイア。
―…アリスじゃない」

「クラウディアス=リグレイド。
お見知りおきを」



『アリス』リアスは私を見上げ、視線を落とし、また上げて、呟く。
諦めたように、微苦笑を浮かべて。

「…名前があるのね、悪魔にも」

「シロウサギです、アリス」

あら―…と、アリスは笑った。
ただ、私を嘲るように。
目を細めて、紅い唇を吊り上げて。



「それじゃあその耳、本物なの?」

「―…えぇ。」



私は手を胸に当て、軽く礼をして見せた。
アリスは口元を手の甲で隠す。


「可笑しな悪魔」

「ウサギですよ、アリス」


我が真名はクラウディアス。
森に食われた、アリスの果て。


銀髪の中、頼りなく伸びるそれ。
血溜りのような、紅い瞳。
雪のような白肌。

シルクハットもモノクルもロングコートも、全てはそれらを覆うため。



 私の型はシロウサギ。

不思議の森のシロウサギ。



アリスをいつも 澱みへ導く。





「アリス」



―…あなたを 夢から。 



「逃がしは しない。」





それが我が型、シロウサギ。



 ウサギの時計は

アナタの時間。 





「始めましょうか、アナタの夢を」





ウサギの時計はアナタの時間。
奪って攫って逃げるから。


アリス 追って来て。

―…迷って。 



此処は不思議な不思議の森。
不思議の森のその入り口。


この森に入ってはいけないよ。


走って疲れて座り込んで。
 寂しがり屋の声が聞こえる。
自分と同じを欲しがる声が―…


―…やがて、

アリスはアリスでなくなって。
森の一部に成り下がる。


此処は不思議な不思議の森。
不思議の森のその入り口。




「アリス、アナタが嫌いです」



堕ちて 私の所まで。 

――fin.

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