暴君アリス
□暴君アリス
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約束したんだ。
―…もう泣かない。
もう 泣けない。
だから、雨を降らしてる。
ボクの代わりに泣くのは空で。
ぬかるんだ土は足を包んで、ちゃんと足跡も残るでしょう?
この道を歩くボクの記憶と。
伝えて ボクの涙の雨。
…やっぱりね、
今も上手くは 笑えない。
《08:Rainy days.》
「アリスが名前をくれたのにゃ」
"セラ"。"セ・ラ・ヴィ"。アリスがアリスでなくなれば、名前は森に奪られるから。
セラ。…セ・ラ・ヴィ。
何度も唱える。
もう二度と、忘れたくないから。
「私もだよ」
シャン・デュ・クール。その瞳は、今の刹那だけの輝き。
[アンアリス]には、名前がない…ただひとつ。
呪いの双子を除いては。
ユーフォリア。あのクソウサギのクラウディウスも。
クソネコ、ココロ。
女王ファルーシュ…。
アリスはたくさん名前をくれた。
セラの先代もアリスが名付けた。
名前を呼ばれて嬉しくて。
失ったモノの大切さ。
愛してる。アリス、心から。
「セラは、こんなに笑うのに。」
「私もたまには笑うけど。」
「「アリス。」」
告げにきた。クソウサギ。
新たなアリスが此処に来る…。
だけど、セラたちにとって、それはあのヒトだけだから。
セラたちのアリス。
ずっとアリスのままで。
だけど疲れてしまったら、セラはいつでも消えていい。
"三月ウサギ"の、
―…席を あけるよ。
「アリスを呼びたい。」
―…名前を知りたい。
「今までどうして聞かなかったの」
「アリスは、アリスと思ってた」
「私も―…森に奪られたよ」
森の住人は探してる。誰もが皆、アリスの名前を。
―…見つからない。
見つかるハズがない。
アリスが それを望んでない。
此処は不思議な不思議の森。
全てはアリスの望みのままに。
「私と思考は同じかい?」
「シャンはそうだと思うかにゃ?」
"死んでもいい"って思うくらい、ただ、アリスが好きだから。
―…そう、
此処は、不思議な不思議の森。
アリス、我らの アリス。
「あなたはウソが上手いけど」
その仮面、きっとセラたちが剥がしてあげる。
―…愛してる。
笑って、だけど、辛くなったら。
ア リ ス 。
* * *