暴君アリス
□暴君アリス
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「………進まなきゃ、かな?」
そうだよね。佇んでいても意味はない―…進まなきゃ。
甘えたアリスをぶん殴りに。
…しかし、どうすればいいかしら。
また通行証でもあるのかしらね?
…シロウサギ。追わせるつもりがホントにあるの?
銀色ナイフ、ウサギの帽子。
私の持ち物。心許ない―…辺りを見回し、確認する。
足元がかなりぬかるんで、靴の中にまで水が染みる。
少し前には、白と黒。
今は泥色ニーソックス。
私は空から落ちてきたのに、雨が降るなんてそもそもおかしい。
おかしいこと、だらけだけれど。
「―…あら、あら!」
適当に森を見回してたら、遠くに古い洋館を見た。
…とりあえず、あそこに行こうと決めてみる。
他に行く道も見つからないし。
私は一歩踏み出した。涙のような雨の海―…邪魔して私の足を捕らえる。
「――…。」
気にしなかった。そんな抵抗―…イヤガラセ。
…相手にするだけバカなのよ。
近づく、洋館に。
なんでもよかったの。
―…私でいられるなら。
「あら…?何、かしら…。」
メアリ・アンの見たネズミの四肢は、オレンジ色の何かに塗れ。
もはや原型のつかぬまで、異常な数に切り刻まれてた。
誰の仕業であったのか―…料理女の知る由も無く。
首を捻って歩を進める。
そちらの、方向は―…。
――fin.