暴君アリス

□暴君アリス
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− * * * −






 独りで逝くのは

―…イヤなのよ。 






 「なんて傲慢なのかしら?」





意味を成さないナイフを見つめ、そっと唇を寄せていた。
降り止まぬ雨、つたう紅色―…
絵画の中の貴族の血。



「―…素敵ね。」



銀色ナイフはポケットに。
ウサギの帽子の泥を払って。

頭に被せてみれば、それは私には大きすぎてた。



《オレンジ・マーマレード》



「何よ、見向きもしないじゃない」

拾い上げ、ラベルを撫でると少し剥がれた。
撫で続ける。ツメで擦った。

文字は薄れて読めなくなって、
伸びてしまったのりが汚い。



「醜いわ。」



まるで私ね、哀れだわ。
跡形無くは消えられない。

ラベルで何だか判断されて、
誰にも見向きされなくて、
それでも藻掻いて剥がしたら―…しっかりとアトが残ってる。



「所詮 名前を付けられて」



それから一生抜け出せないのよ。

だから、アリスは嫌いなの。




 「だって、

私はリアスだもん。」 




澄んだ音。飛び散る橙。

キ エ テ ナ ク ナ レ 。




全部、全部―…。
























擦り寄った。



小さなネズミと視線がぶつかる。

マーマレードの割れたビン。
散った橙を掻き集めてた。

ナミダの雨粒。水溜まり。

海を泳いでいるかのように、
マーマレードを追い掛けて。





「―…ダ、イナ…。」 


 ダメ、私。思い出しては。
また忘れるの、大変でしょう…?

 可愛いダイナ!私のダイナ。
ネズミを取るのが上手だったわ。

 ―…あぁ、




「ウ・エ・マ・シャット…?」






―…私の猫は、何処にいるの。

* * *

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