暴君アリス

□暴君アリス
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− * * * −





「アリス、やめて」

「………。」

滴り落ちる紅い雨。とても綺麗でイヤになる。
鼓動を打つ度じわりと染みて―…そして痛みが走ってつたう。



忌々しい。



 「へいき、クライネ。

―…確認だから」 



生きてることを思い知る。

頼んでもないこの感覚。
酷く、酷く煩わしい。



「―…早く、治して僕らのアリス。
あなたの血なんて見てたくない」

「アンアリスたちは喜ぶけどね」

「気違いだとしか思えない」

「やさしいんだねぇクライネは」


違うと照れる下僕の横で、ボクは切り口に「治れ」と呟く。
手首に出来た深紅の線は、端からたちまち消えてゆく。

手を這う紅が綺麗で醜い。



 「アリスの―…ままで、

死ななきゃね」 



雨が薄めてくボクの紅。
汚いそれでも愛しく思う。


唯一ボクと 彼とをつなぐ。


「だから、雨を好きなんだ」

ボクを溶かした雫を浴びて。
紅を辿って追ってきて。



アリスでいなきゃ なんないの。





 「―…だから クライネ、

泣くのはおやめ?」 



笑ってクライネ キミらのために。

 「…ごめんね、」

ボクは アリスで。 





「巻き込んで ごめん。」





此処は不思議な不思議の森。
気紛れの雨は降り続く―…。



ホントはとても よわいから。



――fin.

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