暴君アリス
□暴君アリス
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「―…いま、」 時間が止まってた?
見ればアリスが傍から消えて、
ただ、シーツが残るだけ。
…それでも服は着てったみたい。
クローゼットが開いたまま。
「…アリスったら、」
僕も一緒に行きたかったな。
おいてきぼりはさびしいよ。
アリス。
「帰って来ればいいだとか、
そんな考え 持っていないよ」
アリス いつでもあなたのそばに。
− * * * −
あの子の首を、
刎ねておしまい。
アリス以外のアリスはいらない。
私のアリスは
―…あの子じゃない。
「あなたにわかって?
―…シロウサギ。」
睨み付ければ静かな紅は、
ただただ黙って私を見遣る。
止みそうにもない気紛れが、
雨音となって響いてた。
ウサギはきっと、アリスが心配。
だってウサギはアリスを望む。
ずっと前からそうだった。
「バカね。望んで、
―…何が得られた?」
絶望を得て 楽しいの?
愚かなウサギは微笑んで、
大切そうに時計を抱える。
…だから、きらいよ。
「…シロウサギ。」
アリスの首を刎ねておしまい。
アリスの首を、刎ねて御仕舞い。
せめてこのまま 終わりましょう。
希望が光を失う前に。
「…いいえ。陛下、私は」
わ た し は 、
ウサギは、信用ならないの。
ネコも信用ならないの。
私のアリスは どこにいる?
「あなたがみんな…壊したのよ」
「………。」
笑顔を浮かべるシロウサギ。
ただ、睨んで吐き捨てた。
此処は、不思議な不思議の森。
庭の白薔薇は血を望む。
赤く、紅く、なりたい だけ。
薔薇の望みはそれだけなのに。
「―…何を、願うの?
アリスになって。」
ウサギはにっこり微笑んで、
懐中時計にキスを降らせる。
止みそうにもない気紛れは、
光を隠して響いてた。
シアワセに、
―…なりたい。
そ れ だ け な の に 。
「どうして うまくいかないの」
* * *