暴君アリス

□暴君アリス
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− * * * −





「―…アリス、何をしているの?」



アリスの家のバルコニー。
白塗りベンチに腰掛けた、僕らのアリスは空を見ていた。

シーツを1枚抱えただけ。
ほとんどハダカの状態で。



打ちつける雨がシーツを濡らす。
鼻歌混じりに空を見上げた、
アリスはとてもキレイだった。



「…この場所は空が近いから」

「だけど、風邪を引いちゃうよ?」

「へいき。すぐに治るもの」



あめ、あめ、ふれ、ふれ。アリスは歌う。
鈴が鳴るよりキレイな声で。

アリスの歌が大好きで、僕は部屋から外へ出た。
アリスと一緒のバルコニー。


黒い雲から涙の様に。


冷たい雨に、アリスと僕はそっと打たれて。



「アイネ、キミこそ風邪引くよ?」

「いいの。アリスとおそろいだよ」



アリス、だから大好きなんだ。
優しいあなたに張りついた、その銀色の一本さえも。



むかぁし、むかし、世界には、
 希望っていう 言葉がなかった。



僕らの世界は塞がれて、
森の喘ぎを聞くしかなくて。



繰り返す。時間を、




絶望にも似た空白に、
―…塗り潰すこと。





きっと、ホントの希望なんてね。
ないんだ、アリスの言う通り。

ただの願いに名前をつけて、ただただ縋って甘えてるだけ。



だからたくさんもがくんだ。



―…ねぇ、





 シ ア ワ セ に

な り た い よ 。 





「アリス、アリス 大好きだよ」



重たい雨をまとってる。
アリスは笑って歌い始めた。



笑っているのに泣いている。



その歌はとても心地よく、
僕はアリスの隣で眠る。





 「アイネ、ごめんね。

―…ありがとう。」 





謝らないで、僕らのアリス。
アイネクライネ、アリスの下僕。

僕はあなたの型無しアイネ。
あなたのために生きるから。





「―…ごめんね。」






此処は、不思議な不思議の森。
雨に降られて色を濃くした。



アリス、アリス 聞かせてよ。





 アリスにとっての

―…希望の定義を。 



――fin. 

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