暴君アリス
□暴君アリス
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落ちる。墜ちる。堕ちる。
―…何処まで?
「リアス、あなたの望むまで」
クライネの、視線はどこかに泳いでた。
それも刹那に消えてゆき、私に笑顔を向けたけど。
「リアス、此処は森の門。
試してるんだ、リアスのことを」
「門に試されるいわれはないわ」
「此処へ来たこと、それが理由」
様々なものが詰め込まれてる。
門と言う名の穴に聳える、長くて深くて巨大な棚に。
それは古臭い蔵書だったり、
気持ちの悪いホルマリン漬け。
時々料理が湯気を立て、銀のナイフとフォークが一対。
無秩序に並ぶ物質からは、見渡す暇すら与えられずに。
上へと流れる景色を恨み、私はそっと目を閉じた。
「ねぇクライネ、あなた私を殺してくれない?」
「ごめんねリアス、アナタは僕らのアリスじゃないから」
「…そう、」
マーマレードを抱き締めた。
この子のアリスの好物を。
ウサギの帽子が潰れそう。
「リアス、何を思ってる?」
そろそろ落下に飽きたでしょう?
クライネは、変わらず笑って首を傾げた。
私はナイフを握り締め、ふぅっと笑って彼を見つめる。
「アナタのアリスに会いたいわ」
「森に行きたいということ?」
「そうなるかもね」
「じゃあ終わろう?門を開けよう、新たなアリス!」
「…どうやって?」
アリスと呼ばれて驚いた。
彼のアリスは私じゃないから。
なるだけ顔に出さない様に、私はクライネを振り向く。
簡単だよ、と緑は言った。
私の右手と彼のを絡めて。
「願いなよ。不思議の森が、叶えてくれる。」
………そうね、此処は不思議の森。
願えば叶えてくれるのね。
私は笑って目を閉じた。
門は私を試してる。
誰か殺して 心臓はココ。
森よ、私を終わりの場所へ。
私はだから不思議の森に。
* * *