暴君アリス

□暴君アリス
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− * * * −




 「―…無駄だよ、死神」



手足を半分失っテ。赤いまダラの服を着る。
自嘲気味に笑ったネコが、歌う様にワタシに呟く。

「それは無駄で、そして無理だ。
…気紛れアリスは森を使う」


このザマだもの、ネコが笑ウ。
ワタシ は、分かラナい。
ネコの囁く「無駄」の、意味。

 「ネコ、ワタシは 殺セル」

 「…そうかな?」

殺せル、 あンナこ、ども。
花を手折るヨリ少ないチカラで。

殺セル、 だって、ネコのため。


「殺セと、頼マレれば…ワタシは、」

「"あなた"は殺せても。」


不思議な不思議ナ不思議の森は、まだネコを生かスつもりらしイ。
夜。風が寄り添う。双子の祝詞が森に響イテ。


 森が、ネコの体を直してク。


くっツケて、クっつケテ。
小さナ破片も、フワリと浮いて。

ネコのカタチに戻ったネコは、シばらクそのまま座ってた。
ワタシを見つめる金の目は、時々キレイで欲しくナる。



 「ネコ、」

 「"あなた"がアリスを殺せても、"彼ら"は納得しないだろうさ」

 「………。」



ネコ。ネコ、ワタシを愛しテ。
壊れるクライの愛を頂戴。
愛死テ。ネコ、ワタシは此処に。



「バイバイ死神、またいつか。」



此処は不思議な不思議の森。
不思議の森の、トアる場所。


ネコとシニガミの祝いの間。




 「ネコ、望むなラ、ワタシは。」



アリス、アリス―…大嫌い。
今スグ貴方を殺しマしょう。




 そ う し タ ら ― … 。




「ネコ、ソノ眼を、ワタシに」


ネコはクスクス笑ってタ。
ワタシの左眼ニ、手を伸ばシて。



「―…ねぇ欲張り。
左眼だけじゃ足りなかったの?」



ツラレてワタシも微笑んダ。
ネコの繊手は冷たクて、なおサラネコを愛しく思ウ。
擦り寄レば、ネコは笑って消えテ行く―…だっテ、ネコはチェシャ猫だカラ。
にンまり顔だけシバらク残り、逃げテク様にネコは消エテく。



「まタ、会いまショウ?
―…ワタシの、ネコ。」




 トワにアナタを、
―…愛シテルかラ。

――fin. 

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