暴君アリス

□暴君アリス
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「三月ウサギの茶会へようこそ!
…って、なんだぁ、帽子屋かにゃ」

「なんだとはなんだ、発情ウサギ」

「失敬にゃ!発情するのはアリスにだけだにゃ」

「死んでアリスに詫びて来い」

「アリスは今も健在にゃ!」





さぁ、お茶会を始めよう。
カップもポットも用意してある。

三月ウサギのお茶会へ。



ようこそ森の 気違いども。





真っ白でふわふわの髪。
…僅かの風に遊ばれて。

発情もとい三月ウサギ。
茶会仲間のセ・ラ・ヴィが、クロの帽子屋を庭へ通す。

何万回目の太陽が、すでに西へと傾いていた。





此処は不思議な不思議の森。
不思議の森のお茶会場。



終わらぬ変わらぬ茶会へおいで。

遊んであげるよ 僕たちが。






「そーゆうワケにゃ、呪いの双子」

「「わかっているよ、三月ウサギ」」



双子の祝詞は寄り添う風。
森の端まで届く唄。

呪いの双子は席につく。


満足そうなウサギの端で、クロの帽子屋は舌を打つ。





アリスが好きで仕方ない。

彼に双子は鬼門だった。





「そういう」 「ワケだから」

「「お話お願い、居眠りネズミ」」



此処は不思議な不思議の森。

祈りも願いも呪いさえ、
合わせ飲んでく不思議の森。



訪問客にはオモテナシ。



それが茶会の大原則。

クロの帽子屋も席につく。
三月ウサギも席につく。



4対の目はひとつを見る。


汚れた皿の山の中、テーブルに突っ伏し眠りこける、クリーム色の髪の男を。



「シャン!シャン・デュ・クール。
 貴方にふたり、お客様だにゃ!」



間抜けた声に眉を寄せ、クロの帽子屋は双子を睨む。

双子は何も返さずに、ただただネズミを眺めてる。



さぁ、お茶会を始めよう。

訪問客はオモテナシ。



茶会の掟は 厳しいよ?



 森へ 住むなら、


い ち ど は お い で 。 



「………話して、あげるよ。
―…気違いども…。」





気違い帽子屋ユーフォリア。
アリスを愛した狂った青年。


全て、アリスの 為だけに。

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