暴君アリス

□暴君アリス
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自由になりたかった。
ただ自由を求めていたんだ。

いつから―…僕は。
アリスで なくなったんだろう。
いつから猫を望んだんだろう。


止まった時の中で、
いつから、いつから―…。




此処は、不思議な不思議の森。
アリスにとっては地獄の森。





流れ続ける森の歌。


アリスの心を食らうから。




僕は、弱かったんだ。
恐かったんだ。

アリス だから嫌いだよ。




僕より強いあなたのことが。





《To Cheshire Cat.》





遠く遠く、思い出すのはいつもね。
あなたが迎えに来てくれる前。
ねぇ僕らにまだ、名前がなかった頃なんだよ、アリス。



ありがとう、アリス。





見付けてくれて。

名前をくれて。

"僕ら"をくれて。





アリス、アリス―…大好きだよ。






「アイネクライネ、アリスの下僕。
あなたにアリスは渡さない」


あなたの好きにはさせないよ。
僕らのアリスは僕が守る。


紫に桃、可笑しな色合い。
猫というより道化のような?



金の瞳の、猫。



「アリスが、いつから君らのものになったのか、僕は知らないけど」

変則的なその雰囲気。
紫と桃の囚人服に、同じ色合いの尻尾が揺れる。
少し丸まった背。
ピエロの猫は、耳をピクピク動かしながら。

重そうな足枷を、引きずって。



「ねぇアイネ。

戯言吐きはどちらかな?」




金の目を。紫と桃、白い包帯。
奇怪な姿をした猫は、その舌先で惑わせるから。
息を飲んで、拳を握って。

僕は、僕の唄を、歌う。




「アイネは光。森の光。
型無しアイネ、アリスのために」



アリスのため、アリスのために。

アリス、アリス―…大好きだよ。




  ―… 赦 し て 、 ア リ ス 。




アイネは此処で果てるから。
だけど猫の戯言からは、
ウサギの怪しい微笑みからは。



せめて あなたを守るから。




「アリスの夢は、我らの戯曲―…。」



此処は不思議な不思議の森。

不思議の、森の―…





* * *

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