暴君アリス

□暴君アリス
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− * * * −




 「アイネ―…?」

アイネクライネ、アリスの下僕。
ふたつでひとつ、ひとつでふたつ。

金色少女が息を飲んでる。
森の入り口のその前で。


…僕らのアリスは違ったよ。
ちゃんとウサギを殺しに行った。


ウサギは死んでないけれど。



 「アイネ、アイネ??」

繋がらない。どうしてアイネ?
何処にいるの?

「アイネ…。」

アイネクライネ、ふたつでひとつ。
ひとつでふたつの 森の精。


金色少女が踏み出した。
シルクハットを握り締めてる。
ウサギの時計はアナタの時間。
ウサギの帽子はアナタの切符。



終点駅まで 止まらない。



金色少女は入り口へ。
石が囲んだ深い洞窟。

大きな口に飲まれそう―…だってホントに飲まれるからね。

金色少女は躊躇った。
だから黙ってなかったんだよ。



 「――…きゃぁぁっ!!」


悲鳴。悲鳴。戯曲が始まる。

此処は不思議な不思議の森。
不思議の森のその入り口。


穴はアリスを飲み込んだ。
影を絡めて飲み込んだ。


此処は不思議な不思議の森。
不思議の森の入り口は。




生きて いるんだよ、アリス。



アリスの消えた影を見つめて、僕はそっと耳を澄ませた。

やっぱりそれは聞こえなかった。
アイネの声は聞こえなかった。


響くは呪いの双子の祝詞だけ。
ただただ双子の祝詞だけ。






『もっと』『もっと』


『『 ま ざ り あ っ て 』』


『ひとつに』『なろう』


『『離れ離れは悲しいよ』』






うるさいんだよ呪いの双子。
そんなのとっくに分かってる。


アイネクライネ、アリスの下僕。
―…ふたつでひとつの 森の精。



ふたつで一対。ひとつじゃない。


 双子のようには なれないから。



アイネクライネ、アリスの下僕。
僕らはいつでも寄り添って。
アイネクライネ、アリスの下僕。



離れる事の無いように―…。



* * *

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