二次創作

□感謝
3ページ/19ページ






神様―…もし在るなら。

…このまま雨を、永遠に。






《Just after the rain.》





空が泣きだした。
決して多くはない人々がそこかしこを走っていく。
傘を持っていないのだろう。
濡れてしまったひとりが、やがて諦めて歩き出した。
そのうちぽつぽつと、同じ行動を取る者が現れる。

 ―…臨也はそれを、窓枠に突っ伏して見ていた。


「…臨也」


呼ぶ声。小さく振り向けば、雨の雫を滴らせた静雄の姿。
臨也はふっと、目を細めた。
吐息は安堵するように、空気をそっと揺らして消えた。

「やぁ、シズちゃん」

「なんでテメェがここにいるんだ、あぁ?」

「………。」

シャツに素肌が透けている。
静雄が血管を浮かせれば、臨也はにっこりと、小さく笑った。


このボロアパートは、静雄の家。

几帳面に片付けられた室内と、畳。
ベッドと机とむき出しのキッチン。
灰皿には、たくさんの吸い殻。

決して広いとは言えない。
それでも確かに、此処にいるのはふたりだけで。
犬猿と呼ばれて啀み合う、たったふたりだけの空間で。


「…雨が降りそうだったから」

「鍵は」

「古いタイプは簡単に開くんだよ」

「………。」

「たまにはいいでしょ?」

「…知るか」

繰り返される意味の無い会話は、紡ぐ度雨の音に掻き消されそう。
ザァザァという大きな音をBGMに、時間は確実に流れてゆく。

臨也は、笑った。
クスクスと音を立てて。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ