二次創作
□他文
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− * * * −
教務室の扉を開けて中に入ると、中の広さに眩暈がしてきた。
―…これを今から掃除すんのか…ひとりで。
ぼーっとしていても何も始まらないし終わらない。
肩を落としつつ、ラルザスは部屋のすみからほうきでゴミを掻き集め始めた。
「はあ………。」
―…龍馬のヤツ、あとで覚えてろよ。
賭けを吹っかけたのは自分だが、それにしても君主を志すなら勝っても手伝ってくれよ、などと呟きながら腕と足を動かす。
そうして少し、時間が経って。
「ラス、」
「!」
背後から、聞き覚えのある声がした。
………振り返れば、銀色。
「…サラ」
「ひとりじゃ大変でしょう?手伝うよ」
右手にほうき、左手にちりとり。
頭には三角巾の、お掃除ルック。
わずかに驚いた顔をしたラルザスに笑いかけたのは、同じ小隊の仲間であるサラだった。
「掃除、しよう?」
「あ、…ああ、、」
どぎまぎしながら返事して、ラルザスはまた黙々とほうきを動かした。
静かな部屋に、ふたりが操るほうきが床と擦れる音が心地よく響いている。
テンポよく重なる音に上乗せされる心音が、サラに届きやしないか。
ラルザスは正直、胸中穏やかでなかった。
ただ黙々と、黙々と、黙々と。
延々と、延々と、延々と。
サラの息遣いと交ざり合う呼吸。
時間にしては20分程度なのに、それはひどく長い時間に思えた。
− * −
「………むぅ」
教務室の扉にもたれ、龍馬は悩ましげな吐息をついた。
だが拗ねたような語意とは違い、その顔はあくまで穏やかに穏やかに。
「手伝いは………必要ないようだな」