Wizardry

□*約束の唄*
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どれ程立派な翼でも、飛び続けることは出来ないでしょう。
強さなんてまやかしに、踊らされちゃァオシマイなんです。

 気をつけて、いってらっしゃい。

いつでもここで、待っているから。
ここがあなたの居場所だから。





「愛してますよ、みなサン」







《02:EveA》







「だらぁぁぁッツ!!」


鮮やかな緑色の髪をウルフカットにした侍が、高らかに雄叫ぶ。
妙に長い後ろ髪をなびかせながら、彼は刀を振るった。

神性すら感じられるその美貌は爛々と輝き、次々と敵陣を崩してゆく。



「荒々しいなぁ…」


艶やかでいて、所々がハネた黒髪を肩口で無造作に切っている。美貌の盗賊の苦笑。
今は赤い―…気持ちの高揚を讃えたその瞳で狙いをつけ、彼は鞭を打った。

姫君を思わせる美麗な顔立ちは涼やかに、敵兵を減らしてゆく。



「"煉獄爆轟MlcLegIryTress火招炎喚…"」


しなやかな銀糸の髪を、長く長く伸ばした魔術士の詠唱。
生まれてから一度も切ったことのないだろう髪を宙に浮かせ、彼は呪文をそらんじる。

まだ幼くあどけない秀麗な顔が、流れる様に紡ぐ術式。
魔力場を敵陣全てに固定し、―…そして、歌う様な詠唱が完成して。




「" マ リ ト "− … 。」




辺りの酸素と、その魔力を媒介に。
残酷なまでの正確さで、全ての敵兵が燃え上がった。
断末魔に近い叫びを上げ、次々と僅かの骨や防具を落とし―…影は消滅していく。


 「はぁ…」


誰が漏らしたか、その吐息だけが空間を揺らした。



彼らの名はケイン、セリナ、セア。

"トロア三国情報屋組合"―…通称、《語り屋組合》の組長。
語り屋のカタリの義息子にして、その弟子たちだ。

* * *

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