妖逆門 小説
□背中
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「術符解放!!」
相手のぷれい屋も負ける訳にはいかない。隙をうかがい、術符を放つ。
たちまち燃え盛る炎が三志郎目がけて吹っ飛んできた。
「!――」
息を呑むのは、ほぼ同時だった。
個魔の反射条件――愛しいぷれい屋の盾となるべく、とっさに三志郎の元へ駆け寄る不壊。
「にぃちゃ――「妖召喚!!」
途端、辺りに帯びる熱に、不壊はその場に踏み止まる。
視界を朱く染めて現れたのは、強力撃符・焔斬。
三志郎を襲うべく向かってくる炎を、自ら噴いた炎で一瞬にして蹴散らした。
「いいぞ、焔斬!さあ、反撃だ!」
汗を拭い、ニカッと笑みを浮かべると、元気よく相手を指差す三志郎。
――ごうごうと熱の撒かれたその場所で、不壊は三志郎から距離を置いたところでその様子を無言で見つめていた。
今、不壊の紅い瞳に映るのは、遠くにある三志郎の背中。
その背中は、いつまで俺の近くにあった?
そんなに遠くのことじゃねぇはずだ
そう
少し前までは――
『フエ〜っ、なんとかしてくれよおっ』
『ったく…しっかりしな、にぃちゃん?』
『だってよ〜っ!』
「いっけぇ――っ!焔斬っ!!!」
焔斬の嘶きが高らかに響き
不壊は目を細める。
――今、そっちに行って
手を伸ばして
にぃちゃんのそばへ行きてぇ
――けど 出来ねぇ
その背中は
にぃちゃんであって
にぃちゃんじゃねぇから……
――そして辺りは炎の色に呑まれた――。
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