銀魂短編

□プレゼントは未来
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「おはようございます」
「おはよーさん」

約束の水曜日の朝。
新八が銀八の部屋へとやって来た。
朝の挨拶をするその表情はニコニコとご機嫌だ。
早く行こうと、銀八の手を引いて促す。


本日は清々しい晴天。
雲も無ければ風も無い。
正にデート日和だ。
日中は暑くなりそうだが目的地は空調の効いた屋内。
それに今日は銀八が車を出すと言うので道中の気温もそんなに憂う必要は無い。


車は近所のよく知る道を抜け、高速道路へと差し掛かる。
ここまで来ると新八には見慣れない景色であり、遠出をする実感が湧いてくる。
目的地まではまだまだ距離があるがこの道中だってとても楽しい。
二人で他愛のない会話を弾ませる。

「僕おやつ持って来たんです。食べていいですか?」
「いいよ。ってガチで遠足気分ですか志村クン?」
「だって、一緒に出掛けるのなんて久々だから、嬉しくて・・・」

新八が少し頬を染めて笑う。
クラスの中ではしっかり者のこの子が、自分の前で年相応にはしゃいでみせる。
持参したという菓子を頬張る彼を横目で見やり、銀八が口角を上げた。

「先生もどうぞ」
「サンキュー」

運転中の銀八を気遣い新八が横から菓子を差し出す。
銀八の大好きな甘いクッキー。
糖尿予備軍の彼に新八自ら甘味を与える事なんて普段はまず無いが、今日は特別らしい。

差し出された手から直接それを食べ、銀八は次をねだった。


///

「着きましたねー」
「あーやれやれ。来るだけで一仕事終えた気分だわ。
 近くにホテルがあったから休憩しに行こうぜ」
「絶対にヤです。
 それに、折角のチケットを無駄にしたくないです」
「チッ、しゃァねぇ。そんじゃま、目的地の方行きますかね」
「はいっ。へへ、楽しみですね」

銀八が冗談半分で言った提案はあっさりと却下されてしまった。
とりあえずは引き下がる事にする。

目的地たる水族館は目の前だ。
早く行こうと、新八がまた銀八を急かす。
彼は本当にウキウキと楽しそうだ。
こうも素直な可愛らしさを見せつけられては銀八も気分が良い。
なので助手席の方へ覆い被さり、新八の唇を一度啄ばんでやった。



「わぁっ、大きな水槽!もっと近くに見に行きましょう!」
「分ァったからちょっと落ち着きなさいよ」

入場ゲートをくぐり入った大きな建物の正面に広がる大水槽。
色々な生き物が悠々と泳ぐその中は自ずと入場者の目を引く。
彼らだってそれに漏れず。

分厚いアクリルの向こうに大きなエイを見つけてますます楽しそうにはしゃぐ新八。
のんびりと歩を進める銀八に焦れて彼の手を引いた。


「あ、こっちに来ましたよ!向こうにウミガメもいます!」
「・・・ホンット、楽しそうね」

新八はすっかり水槽の中へ釘付けだ。
まだ来たばかりだというのにもう夢中になっている。
日頃中々無いこの機会がよっぽど楽しいらしい。

随分活きのいいこの子の反応は銀八を妙に愉快な気分にさせる。
目の前の小さな頭をクシャクシャと撫でてやった。
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